概要
「ソルテア」は、イングランド北部ウェスト・ヨークシャーにある、ヴィクトリア朝時代に建設されたモデルヴィレッジ(模範村)です。実業家であり慈善家でもあったサー・ティトゥス・ソルトが、自社の織物工場の労働者のために、劣悪だった都市の生活環境から離れた場所に建設しました。保存状態の良い工場、住宅、公共施設群が評価され、世界文化遺産に登録されました。
ティトゥス・ソルトの理想都市
19世紀半ば、産業都市ブラッドフォードの劣悪な衛生環境と労働条件を憂慮したソルトは、労働者のための理想的なコミュニティを構想しました。彼はエアー川沿いの土地に巨大な「ソルツ・ミル」を建設し、その周囲に質の高いテラスハウス、学校、病院、教会、公園、公衆浴場などを計画的に配置しました。労働者の健康と福祉を第一に考えたこの村には、風紀を乱すという理由でパブ(酒場)は一軒も建てられませんでした。
建築と都市計画
ソルテアの建物は、イタリア・ルネサンス様式を基調とした統一感のあるデザインで知られています。特に村のランドマークであるソルツ・ミルは、当時の工場建築としては異例の壮麗さを誇ります。村全体が、ヴィクトリア朝時代の優れた都市計画の証しとなっています。
| 施設名 | 特徴 |
|---|---|
| ソルツ・ミル | 巨大な織物工場。現在は商業施設、レストラン、アートギャラリーとして活用されている。 |
| 労働者の住宅 | 当時の標準をはるかに超える、衛生的で質の高い石造りのテラスハウス。 |
| ユナイテッド改革派教会 | ソルトが私財を投じて建設した壮麗な教会。 |
| ヴィクトリア・ホール | 図書館やコンサートホールとして利用されたコミュニティ施設。 |
世界遺産登録基準
- (ii) 19世紀の産業革命期において、慈善的な思想が都市計画に与えた影響を示す顕著な例である。
- (iv) ヴィクトリア朝時代の慈善的産業活動が生み出した、完全な形で保存されている産業町の優れた見本である。