メンフィスのピラミッド地帯

               
国名 エジプト・アラブ共和国
世界遺産の名称 メンフィスのピラミッド地帯
遺産の種類 文化遺産
登録年 1979
拡張・範囲変更
登録基準 (ⅰ), (ⅲ), (ⅵ)
備考

メンフィスのピラミッド地帯とは

エジプトの首都カイロ近郊、ナイル川西岸にあるメンフィスのピラミッド地帯は、古代エジプト古王国時代(紀元前2650ごろ〜前2120ごろ)の王たちがつくった巨大な建造物のある地域です。王国の都だったメンフィス周辺のギザからダハシュールにかけて、約30のピラミッドやその他の建造物が点在しており、古代エジプトの歴史を物語る貴重な建造物群であるとして1979年に世界文化遺産に登録されました。

登録基準の具体的内容

世界遺産の登録基準ⅰ、ⅲ、ⅵが認められています。

ICOMOSから世界遺産委員会に提出された推薦書では以下のように説明されています。

登録基準ⅰ

エジプトのピラミッドは、常に世界的な賞賛を引き起こしてきた。古代においてさえも、それらは、「世界の7不思議」に数えられてきた。これらは、驚くべき宝物と計り知れないほど貴重な芸術作品を収容するネクロポリスや神殿に周囲を囲まれ、人類の創造的精神の独特な芸術的表現であり傑作であるという評判に間違いなく値する。

登録基準ⅲ

メンフィスの集合体は、偉大な古代の特異な記念物群を含んでいる。メンフィスの時代の最初のファラオであるジェセル王の階段ピラミッドは、全体が石灰岩から建造され、規則的に切り出した石で建造された世界最古の建築物として知られている。ギザでは、クフ王の複合体において、現存する世界最古の船である「太陽の船」が完全な形で発見された。サッカラの初期王朝のネクロポリスは、ファラオの文明の形成期にまでさかのぼる。

登録基準ⅵ

地球上で最も輝かしい文明の証拠であるこれらの記念物の類まれな歴史的、芸術的、社会的な影響力は、解説を必要としないほど明白である。

遺産の概要

ピラミッドを初めて建造させたのは、古王国時代第3王朝のジェセル王でした。古王国時代以前の王や貴族は、メンフィス近くに日干しレンガなどでマスタバと呼ばれる角形の墳墓をつくっていました。しかしジェセル王は、宰相イムホテプに命じ、それまでにない墓をつくらせたのです。

イムホテプはまず「不滅の」建材である石を使って高さ10mのマスタバをつくり、その四方を拡張し、上に石を積んで4層のピラミッドを建造しました。その後、4層のピラミッドをもとにして6層、高さ60mのピラミッドをつくり上げたのです。

このピラミッドの周辺には神殿などの建造物もあり、神殿からはミイラづくりの際に取り出した王の臓器を納める装飾壺なども発見されています。これ以後、歴代の王たちは競うようにピラミッドを造営します。

第4王朝のスネフェル王は、屈折ピラミッドや赤のピラミッドなど、在位中に3つのピラミッドを建造したと言われています。さらに、次のクフ王の時代には現存する最大のピラミッドが作られました。このピラミッドは、建造時には高さが150mもあったとされており、平均2.5tの石が約230万個も使われたといわれています。近年、周辺から労働従事者のための宿舎跡が見つかったことから、建造は農閑期に人々を動員する一種の公共事業であったとする説も出ています。

クフ王のピラミッド建造には3万人とも10万人ともいわれる人々が従事したとされていますが、どのようにして大きな石を積み上げたのか、建造方法についてはいまだ謎が多いです。

また、ピラミッド建造には労働力のみならず、大きな財力も必要としました。クフ王の後もギザにはカフラー王、メンカウラー王の巨大ピラミッドが建造されましたが、その次のシェプセスカフ王は、自らの墓所として簡単なマスタバを建造しました。

その後のファラオも小規模なピラミッドにとどまるようになり、ピラミッド時代は終焉を迎えたのです。

メンフィス周辺に作られた主なピラミッド

階段ピラミッド

サッカラにある、ジェセル王により紀元前2650年ごろに建造された最古のピラミッドです。階段は王の魂を天に導くためのものといわれています。

屈折ピラミッド

ダハシュールにある紀元前2600年ごろに建造されたピラミッドです。下部に比べて上部の屈折が緩やかになっていますが、これは建設中に地盤が緩んだため全体を軽くしたのだといわれています。

赤のピラミッド

ダハシュールにある、スネフェル王により紀元前2600年ごろに建造されたピラミッドです。呼び名は石材の色によるもので、現存する最古の真正(正四角錐)ピラミッドです。

崩れピラミッド

メイドゥームにある紀元前2600年ごろに建造されたピラミッドです。最初は階段ピラミッドとしてつくられ、後に階段部分を石材で埋めて四角錐にされましたが、風化して崩れたといわれています。

クフ王のピラミッド

「ギザ三大ピラミッド」のひとつで、エジプト最大の規模を誇ります。紀元前2550年ごろ建造されました。

南側にはクフ王が天を航海するための太陽の船が埋蔵されていました。

カフラー王のピラミッド

「ギザ三大ピラミッド」のひとつで、クフ王のピラミッドのすぐ南西に位置します。紀元前2500年ごろに建造されました。

ピラミッドに付属する周辺の遺跡の保存状態が良く、全長約500mの参道の途中には大スフィンクスが横たわっています。

メンカウラー王のピラミッド

「ギザ三大ピラミッド」のひとつで、カフラー王のピラミッドのすぐ南西に位置します。

紀元前2450年ごろに建造され、その後増築されました。

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