概要
「国境防備の町エルヴァスとその要塞群」は、ポルトガル東部、スペインとの国境に位置する世界最大の塁壁を持つ要塞都市です。17世紀から19世紀にかけて、ポルトガルの独立を守るために築かれた世界最大級の星形要塞群が良好な状態で保存されています。オランダの軍事技術を基礎とする、世界で最も精巧な防御システムの一つとして、2012年に世界文化遺産に登録されました。
世界遺産登録基準
- (iv) 17世紀から19世紀にかけてのヨーロッパの軍事建築と防衛技術の発展を示す、最も優れた現存例です。オランダ、イタリア、フランス、イギリスの軍事理論が実践された、傑出した要塞システムを代表しています。
歴史的背景
エルヴァスは、1640年に始まったポルトガル王政復古戦争において、スペインに対する最前線の軍事拠点として極めて重要な役割を担いました。このため、フランスの軍事技術者ヴォーバンの理論を取り入れた、当時最新の防御システムが構築されました。これらの要塞群は、ポルトガルの独立と主権を守り抜いた歴史の証人です。
主な構成資産
この遺産は、エルヴァスの旧市街を囲む城壁と、その周囲に配置された複数の要塞、そして都市機能を支えるインフラから構成されています。
- アモレイラ水道橋:全長8kmに及ぶ壮大な水道橋で、長期間の籠城戦に備えて町へ水を供給するために建設されました。防衛システムの一部として不可欠な存在です。
- サンタ・ルジア要塞とグラサ要塞:町の周囲の丘に築かれた星形の要塞で、相互に連携して敵の攻撃を防ぐように設計されています。
- 市壁:複数の稜堡(りょうほ)を持つ複雑な形状の城壁が、旧市街全体を取り囲んでいます。