概要―宗教的寛容の象徴
「ヤヴォルとシフィドニツァの平和教会」は、ポーランド南西部のシロンスク(シレジア)地方にある2つの巨大な木造教会です。これらは三十年戦争(1618-1648年)の終結をもたらしたヴェストファーレン条約に基づき、カトリックの神聖ローマ皇帝がプロテスタント(ルター派)信徒に建設を許可したものです。「平和教会」の名は、この条約に由来しています。宗教的対立の時代における、平和と寛容への願いを象徴する建造物として、2001年に世界文化遺産に登録されました。
遺産の価値
建設にあたり、プロテスタント側には厳しい制約が課されました。石や煉瓦は使えず、木や土、藁といった朽ちやすい素材のみを用いること、城壁の外に建てること、鐘楼や塔を持たないこと、1年以内に完成させることなどです。しかし、信者たちはこれらの制約を逆手に取り、驚異的な技術と情熱でヨーロッパ最大の木骨造宗教建築を完成させました。質素な外観とは対照的に、内部は数千人を収容できる多層の桟敷席と、聖書の物語を描いた豪華絢爛なバロック様式の装飾で埋め尽くされており、その対比が訪れる人を圧倒します。
登録基準
この世界遺産は、以下の登録基準を満たして登録されました。
- (iii) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
- (iv) ある歴史上の時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
- (vi) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの。