概要
カミノ・レアル・デ・ティエラ・アデントロは、メキシコシティからアメリカ合衆国ニューメキシコ州のサンタフェまで、約2600kmにわたって延びていた歴史的な交易路です。「内陸部の王の道」を意味し、通称「銀の道(シルクロード)」として知られています。16世紀から19世紀にかけて、サカテカスやグアナフアトなどで採掘された銀をメキシコシティへ運び、ヨーロッパへ輸出するための大動脈でした。この道を通して、鉱物だけでなく、人々、宗教、文化、商品が活発に行き交い、メキシコ北部の社会・文化形成に決定的な役割を果たしました。2010年に、この交易路のうちメキシコ国内の1400kmの区間と、沿道の55の歴史地区や施設が世界文化遺産に登録されました。
「銀の道」が結んだ文化交流
カミノ・レアルは単なる輸送路ではなく、文化伝播の回廊でした。スペインからもたらされたキリスト教、建築様式、法制度などがこの道を通じて広まる一方、先住民の文化もまた交易路の発展に影響を与えました。道沿いには、鉱山都市、教会、修道院、アシエンダ(大農園)、橋、宿場町などが点在し、それらが一体となってこの道の歴史的重要性を物語っています。
沿道の主要都市の例 | 特徴 |
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サカテカス | 「銀の貴婦人」と称された鉱山都市。豪華なバロック建築が残る。 |
グアナフアト | 銀鉱脈の上に築かれた都市。カラフルな家並みと地下道が特徴。 |
サン・ミゲル・デ・アジェンデ | 交易路の防衛と中継を担った美しいコロニアル都市。 |
世界遺産登録基準
- (ii) 300年以上にわたり、スペインとアメリカ大陸の社会、文化、宗教の交流を促進し、特にメキシコ北部とアメリカ南西部の文化形成に貢献した。
- (iv) 銀の採掘と輸送という経済活動が、いかにして都市、産業施設、宗教建築群を生み出し、広大な領域に影響を与えたかを示す顕著な例である。