概要
オーストラリアの哺乳類化石地域は、クイーンズランド州の「リバーズリー」と、南オーストラリア州の「ナラコーテ」という、離れた2つの地域からなる世界自然遺産です。1994年に登録されました。これらの地域は、数千万年前から数万年前にかけてのオーストラリア大陸の哺乳類の進化史を、他に類を見ないほど完全な形で記録している化石の宝庫です。特に、有袋類がどのように多様化していったかを解明する上で、世界中の古生物学者にとって極めて重要な場所とされています。
科学的な価値
この遺産の価値は、オーストラリア独自の生態系が形成される過程を、化石記録を通じて詳細に追跡できる点にあります。
- 進化の記録: リバーズリーとナラコーテの化石群は、合わせて2000万年以上にわたる哺乳類の進化の歴史を網羅しています。これにより、気候変動が生物の進化にどのような影響を与えたかを具体的に研究することができます。
- 保存状態の良さ: 化石は非常に良好な状態で保存されており、中には胎児を宿したままの有袋類の化石や、動物の頭蓋骨が完全な形で見つかることもあります。これにより、古代生物の生態を詳細に復元することが可能です。
主要な地区と発見
2つの地区は、異なる時代の化石を産出するという特徴があります。
| 化石保存地区 | 特徴と主要な発見物 |
|---|---|
| リバーズリー | 約2500万年前〜500万年前(漸新世〜中新世)の化石が中心。古代の熱帯雨林に生息していた、フクロライオンや巨大な鳥類、世界最古の有袋類の化石などが発見されています。 |
| ナラコーテ | 約50万年前〜現代(更新世)の化石が中心。洞窟に落下した動物たちが自然の罠にかかる形で化石化しており、巨大なカンガルーやディプロトドンなどの大型有袋類(メガファウナ)の化石が豊富です。 |
世界遺産登録基準
この遺産は、以下の基準を満たしたと見なされ、世界遺産に登録されました。
- (viii) オーストラリア大陸における哺乳類の進化の主要な段階を代表する、世界で最も優れた化石記録の一つである。
- (ix) 大陸の気候変動と孤立が、いかに独特な有袋類の動物相を発展させたかを示す、生態系進化の顕著な見本である。