概要
カカドゥ国立公園は、オーストラリア北部準州に位置する広大な国立公園で、その面積は日本の四国に匹敵します。1981年に世界遺産に登録され、その後範囲を拡大しながら、自然と文化の両方の価値が認められた複合遺産となりました。この地は、4万年以上にわたって先住民アボリジニが暮らし続ける聖地であり、断崖に描かれたロックアート(岩絵)群と、湿地帯やサバンナが織りなす多様な生態系で知られています。
文化と自然の価値
カカドゥ国立公園の最大の価値は、人類の悠久の歴史と、手つかずの大自然が一体となって存在している点です。
- 文化遺産の価値: 公園内に点在するロックアートは、世界最古級の芸術活動の記録であり、アボリジニの神話、儀式、狩猟生活などを描いた「生きた教科書」です。その歴史は2万年前にまで遡ると言われています。
- 自然遺産の価値: 雨季と乾季で劇的に景観を変える広大な湿地帯は、ワニや数多くの水鳥の楽園です。また、サバンナ、ユーカリ林、モンスーン林など多様な生態系が混在し、オーストラリアの生物多様性を象徴する場所となっています。
主な見どころ
公園内には、文化と自然の両方を体感できる見どころが数多くあります。
景観・遺跡 | 説明 |
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ウビル・ロック | アボリジニの「X線描法」で描かれた動物の絵が有名。岩の上からは広大な湿地帯を一望できます。 |
ノーランジー・ロック | 断崖のシェルターに、神話に登場する精霊などが描かれた壁画が集中しています。 |
イエローウォーター湿地 | クロコダイルやカササギガンなど、多種多様な野生動物を間近で観察できるクルーズが人気です。 |
アーネムランド高原 | 公園の東側に広がる断崖地帯。壮大な景観とともに、多くのロックアートが残されています。 |
世界遺産登録基準
この遺産は、以下の基準を満たしたと見なされ、世界遺産に登録されました。
- (i) この地域に描かれたロックアートは、人類の創造的才能を示す傑作である。
- (vi) 先住民の芸術や神話は、今なお続く生きた文化的伝統と深く結びついている。
- (vii) 湿地、断崖、サバンナが織りなす景観は、他に類を見ない自然美を有している。
- (ix) 陸上・沿岸の生態系の進化を示す、現在進行形の顕著な見本である。
- (x) 生物多様性の保全上、多くの固有種や絶滅危惧種を含む、極めて重要な自然の生息地である。