インドの山岳鉄道群とは
インドの山岳鉄道群は、19世紀末から20世紀初頭にかけて、イギリス植民地時代に建設された3つの鉄道を指す世界遺産です。いずれもインドの険しい山岳地帯において、革新的な土木技術を用いて敷設されました。これらの鉄道は、単なる交通手段ではなく、山岳地域の開発に大きく貢献した歴史的価値と、雄大な自然景観の中を走る魅力が高く評価されています。まず1999年にダージリン・ヒマラヤ鉄道が登録され、その後2005年にニルギリ山岳鉄道、2008年にカールカ=シムラー鉄道が追加登録されました。
世界遺産登録基準
(ii) 文化交流の証拠: 辺境地域における鉄道の敷設という課題に対し、多文化的な環境の中で技術が交換され、発展したことを示す顕著な見本です。
(iv) 建築技術の顕著な見本: 山岳鉄道の建設が、その後の世界の鉄道技術に大きな影響を与えた、優れた技術的達成の例証です。
構成される3つの鉄道
ダージリン・ヒマラヤ鉄道
1881年に全線開通した、最も有名な山岳鉄道。「トイ・トレイン」の愛称で親しまれています。急勾配を克服するため、スイッチバックやループ線といった独創的な技術が多用されています。
ニルギリ山岳鉄道
南インドのタミル・ナードゥ州を走る鉄道。アジアで唯一、ラック式(歯車と歯型のレールを噛み合わせて進む方式)を採用しているのが最大の特徴で、急斜面を力強く登り降りします。
カールカ=シムラー鉄道
避暑地として知られるシムラーへと続く鉄道。96kmの路線に100以上のトンネルと800を超える橋梁が建設されており、当時の土木技術の高さを物語っています。
観光と保全
これらの鉄道は現在も運行されており、車窓からヒマラヤや西ガーツ山脈の絶景を楽しめる人気の観光資源となっています。一方で、老朽化した設備の維持管理や自然災害からの保護が重要な課題となっています。
| 鉄道名 | 開通年 | 全長(km) | 主要な特徴 |
|---|---|---|---|
| ダージリン・ヒマラヤ鉄道 | 1881年 | 約88km | ループ線、スイッチバック |
| ニルギリ山岳鉄道 | 1908年 | 約46km | ラック式鉄道 |
| カールカ=シムラー鉄道 | 1903年 | 約96km | 多数のトンネルと橋梁 |