概要
「ケープ植物区保護地域群」は、南アフリカ共和国の西ケープ州から東ケープ州にかけて広がる、驚異的な植物多様性で知られる地域です。2004年に登録され、2015年に範囲が拡張されました。この地域は、地球に6つしかない植物区系(フローラ)の一つで、面積は最も小さいながら、アフリカ大陸の植物種の約20%が集中するホットスポットです。遺産は、テーブルマウンテン国立公園を含む13の保護区群で構成されています。
フィンボスと驚異的な植物多様性
この地域の植生の90%以上を占めるのが「フィンボス」と呼ばれる灌木群落です。フィンボスは、地中海性気候と栄養に乏しい土壌に適応した、硬い葉を持つ植物が特徴です。主な特徴は以下の通りです。
- 圧倒的な種数と固有率:約9,000種の維管束植物が生育し、そのうち約69%がこの地域以外のどこにも見られない固有種です。
- 火災への適応:フィンボスの生態系は、定期的に起こる自然火災に依存しています。火災によって古い植生が除去され、土の中に眠っていた種子が発芽する、巧みな生存戦略を持っています。
- 多様な植物:プロテア、エリカ、レスティオなど、多様な科の植物が見られます。
遺産の構成
この連続遺産は、ケープ植物区の多様な生態系を代表する複数の保護地域から成り立っています。代表的なものに、ケープタウンの象徴であるテーブルマウンテン国立公園や、手付かずの自然が残るセダーバーグ自然保護区などがあります。
登録基準
この遺産は、以下の基準を満たしたとされています。
- (ix) フィンボスに見られる植物の適応放散や受粉戦略、火災への依存などは、生態学的・生物学的プロセスを示す顕著な例である。
- (x) 世界の温帯地域の中でも際立った植物多様性を示し、多数の固有種や絶滅危惧種の生息地として、保全上きわめて重要な価値を持つ。