概要
「セント・キルダ」は、スコットランドの沖合に浮かぶ孤島群で、その類まれな自然環境と、2000年以上にわたる人間の営みの痕跡が評価され、世界複合遺産に登録されています。イギリスで唯一の複合遺産であり、ヨーロッパで最も壮大な海食崖の風景が広がっています。1930年に最後の住民が退去するまで、人々は隔絶された厳しい環境の中で独自の文化を育んできました。
文化的景観と自然環境
セント・キルダの景観は、自然の力と人間の活動が織りなす独特のものです。
文化的側面では、石造りの家屋が残る村の遺跡や、食料貯蔵庫として使われた「クリート」と呼ばれる数多くの石積み小屋が島中に点在し、かつての生活を物語っています。また、断崖絶壁で海鳥を捕獲するという伝統的な営みも、この地の文化を特徴づけています。
自然的側面では、ニシツノメドリやカツオドリなど、ヨーロッパの海鳥の個体数において国際的に重要な繁殖地となっています。また、固有種であるセント・キルダミソサザイやセント・キルダハタネズミも生息しています。
世界遺産登録基準
- (iii) 2000年以上にわたり、最も厳しい環境下で人間が生き抜いてきた証拠を示す、消滅した文化的伝統の類い稀な証拠である。
- (v) 厳しい環境下での牧畜や食料加工など、伝統的な土地利用を示す顕著な見本である。
- (vii) ヨーロッパで最も高い海食崖など、息をのむような自然美を誇る景観を有している。
- (ix) 島嶼生態系における生物進化の過程を示す、孤立した海洋生態系の顕著な見本である。
- (x) 世界的に重要な海鳥の繁殖地であり、固有種を含む生物多様性の保全にとって極めて重要な場所である。