「月の山」の壮大な自然遺産
ルウェンゾリ山地国立公園は、ウガンダ西部に位置する山岳地帯の自然保護区で、1994年にユネスコの世界自然遺産に登録されました。「月の山」とも称されるルウェンゾリ山地は、その壮大な景観と豊かな生物多様性で知られています。
この山地は、アフリカ大陸でキリマンジャロ、ケニア山に次いで3番目の高さを誇り、最高峰はマルガリータ山(標高5,109メートル)です。赤道直下にもかかわらず山頂には万年雪と氷河が広がり、氷河によって削られた谷、湖沼、高山湿地、そして熱帯雨林まで、多様な環境が凝縮されています。
世界遺産としての価値
登録基準
この公園は、以下の2つの基準を満たしたことで世界遺産に登録されました。
- 登録基準(vii): 類まれな自然美
氷河を抱く高峰、切り立った断崖、神秘的な霧に包まれた谷など、変化に富んだ壮大な景観が評価されています。 - 登録基準(x): 重要な生物多様性
標高差によって多様な植生帯が垂直に分布し、多くの固有種や絶滅危惧種を含む動植物が生息する、生物多様性保全上きわめて重要な地域です。
独自の生態系
ルウェンゾリ山地の大きな特徴は、標高に応じて劇的に変化する生態系です。山麓の熱帯雨林から、竹林、そして標高3,000メートルを超えると現れる「ヘザー(タケカンバ)帯」が広がります。さらに高地では、ジャイアントロベリアやジャイアントセネシオといった、この地域特有の巨大な高山植物が群生する幻想的な風景を見ることができます。
生息する主な動植物
ルウェンゾリ山地は、多種多様な野生生物の楽園です。特に高山帯の植物や、固有種の鳥類、霊長類の重要な生息地となっています。
| 分類 | 代表的な種 |
|---|---|
| 動物 | マルミミゾウ、チンパンジー、ルウェンゾリ・コロブス、ルウェンゾリ・ツラコ(鳥類) |
| 植物 | ジャイアントロベリア、ジャイアントセネシオ、ヘザー(タケカンバ)、竹 |
観光と保全活動
その唯一無二の自然景観を求めて、世界中から多くの観光客が訪れます。特に、数日かけて山頂を目指す高山トレッキングや、豊かな動植物を観察するエコツアーが人気です。一方で、気候変動による氷河の融解や観光による環境負荷が懸念されています。そのため、公園管理当局は地域コミュニティと連携し、環境への影響を最小限に抑える持続可能な観光を推進しており、その保全活動は国際的にも評価されています。