ラリベラの岩の聖堂群とは
ラリベラの岩の聖堂群は、エチオピア北部の高原地帯にある、一枚岩を地上から掘り下げて造られた11の岩窟教会群です。12世紀後半から13世紀初頭にかけて、ザグウェ朝のラリベラ王が「第二のエルサレム」をこの地に築こうと建設したと伝えられています。そのユニークな建築様式と宗教的な重要性から、1978年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。
遺産の価値と登録基準
ラリベラの聖堂群は、屋根や壁、柱、装飾に至るまで、すべてが一つの岩塊から彫り出された「モノリシック建築」の傑作です。その卓越した技術と芸術性、そしてエチオピア正教の信仰が深く根付いた生きた巡礼地としての価値が評価されています。
- 登録基準(i):岩を直接彫り下げるという類まれな方法で建設された聖堂群は、人類の創造的才能を示す傑作です。
- 登録基準(ii):中世エチオピアにおけるキリスト教文明の発展と、多様な建築様式の影響を示す重要な証拠です。
- 登録基準(iii):建設以来、巡礼と信仰の中心地であり続けており、エチオピア正教の生きた伝統を伝える類いまれな証拠です。
聖堂群の構成
11の聖堂は、敷地内を流れるヨルダン川(とされる小川)を挟んで2つのグループに分かれ、さらに孤立した場所に最も有名な聖ギオルギス教会が位置しています。
| 聖堂名 | 特徴 |
|---|---|
| 聖ギオルギス教会 (Bete Giyorgis) | 上空から見るとギリシャ十字の形をした、最も精巧で保存状態の良い教会。ラリベラの象徴的存在。 |
| 救世主の教会 (Bete Medhane Alem) | 世界最大の岩窟教会。アクスム様式の巨大な柱が特徴的な内部空間を持つ。 |
| 聖マリア教会 (Bete Maryam) | 最も古い教会の一つとされ、内部の壁画や彫刻が美しい。ラリベラ王の墓があるとされる。 |
| 聖エマニュエル教会 (Bete Amanuel) | アクスム様式の影響を受けた外壁の縞模様が特徴的な、非常に美しい教会。 |
保全上の課題
風雨による侵食や構造的な脆弱性が懸念されており、一部の教会には保護用のシェルターが設置されています。遺跡の保護と、信仰の場としての利用を両立させることが大きな課題となっています。
参考文献
「ラリベラの岩窟教会群」.UNESCO. https://whc.unesco.org/ja/list/18