城壁都市シバームとは
城壁都市シバームは、イエメンのハドラマウト地方に位置する古代都市です。高層の泥煉瓦建築が林立するその景観から「砂漠のマンハッタン」と称され、1982年にユネスコの世界遺産に登録されました。シバームは、壮大な泥煉瓦の建築群と、厳しい自然環境に適応した独特の都市計画で世界的に知られています。
ハドラマウト地方の交通の要所に位置し、古くから交易の中心地として繁栄してきました。外敵からの侵略を防ぐため、都市は高い城壁で囲まれ、住居は塔のように高く建てられています。
世界遺産としての価値
登録基準
シバームは以下の3つの基準を満たし、世界遺産に登録されました。
- (iii) 文明の証拠: 16世紀頃から現在見られる姿に発展した高層建築群が、ハドラマウト地方の伝統文化を独自に伝えるものである点が評価されています。
 - (iv) 建築技術の顕著な見本: 垂直方向に都市を発展させたその都市計画は、土地利用の優れたモデルであり、防御と生活を両立させた建築技術の顕著な例です。
 - (v) 人類と環境の交流: 厳しい砂漠環境に適応し、持続可能な居住形態を実現した伝統的な集落の典型例として評価されています。
 
建築的・歴史的価値
シバームの価値は、その建築と歴史に深く根差しています。
- 建築的価値: ほとんどの建物が日干し煉瓦で作られており、5階から8階建ての塔状の構造を持っています。密集して建てられた高層建築群が都市全体を城壁のように機能させ、強固な防御システムを形成しています。
 - 歴史的価値: 古代から交易ルートの要所として栄え、文化的・経済的に重要な役割を果たしてきました。その歴史は、今も残る都市の構造や建築様式に色濃く反映されています。
 
シバームの概要と特徴
地理と気候
シバームはハドラマウト地方の内陸部に位置し、年間を通してほとんど雨が降らない乾燥した砂漠気候が特徴です。夏は非常に高温になり、冬は比較的過ごしやすい気候となります。
主要な建造物
旧市街には、約500棟の高層住居のほか、モスクや公共の広場など多くの歴史的建造物が現存しています。
| 建造物名 | 説明 | 
|---|---|
| 高層泥煉瓦建築 | 5階から8階建ての塔状の建物で、住居として利用されている。 | 
| 城壁 | 都市全体を囲む防御用の壁。いくつかの門が設けられている。 | 
| スーク(市場) | 旧市街の中心部にあり、歴史的な交易の中心地として賑わってきた。 | 
観光と保全
その唯一無二の景観と歴史的価値から、シバームは多くの観光客を魅了してきました。しかし、近年のイエメンの情勢不安や、風雨による浸食、近代化の影響などにより、遺産は深刻な危機に瀕しています。そのため、国際的な支援のもとで修復・保全活動が進められていますが、依然として多くの課題を抱えています。
まとめ
城壁都市シバームは、その美しい建築と歴史的価値によって、訪れる人々に深い感銘を与えます。厳しい自然環境の中で育まれた独自の文化と建築様式は、人類が未来に向けて守り続けていくべき重要な遺産です。