ダウリアの景観群とは
ダウリアの景観群は、モンゴル東部とロシア連邦のザバイカル地方にまたがる広大な草原地帯で、2017年にユネスコの世界自然遺産に登録された国境を越える世界遺産(トランスバウンダリー・サイト)です。この地域は、広大なダウリア草原(ステップ)を中心に、森林、湖沼、湿地など多様な生態系がモザイク状に広がり、独特の景観を形成しています。特に、東アジア・オーストラリア地域フライウェイ(渡り鳥の飛行経路)の重要な中継地として、多くの希少な渡り鳥を支えています。
世界遺産登録基準
- (ix) 乾湿のサイクルが繰り返されるという、周期的かつ急激な気候変動によって生態系がダイナミックに変化する過程を示す顕著な例であることが評価されました。
- (x) マナヅルやアネハヅルといった絶滅危惧種の鳥類や、世界的な個体数を誇るモンゴルガゼルの生息地など、生物多様性の保全上、国際的に極めて重要な地域であることが評価されました。
遺産の価値
ダウリアの景観群の価値は、そのダイナミックな生態系と豊かな生物多様性にあります。
- パルス生態系:この地域は数十年周期で乾期と湿潤期が繰り返され、それに伴い湖の水位や草原の植生が劇的に変化します。この変動が、多様な生物の生息環境を生み出す原動力となっています。
- 渡り鳥の楽園:数百万羽の渡り鳥にとって不可欠な繁殖地、中継地、越冬地となっています。特に、絶滅が危惧されるマナヅルや、カリガネ、サカツラガンなどの重要な生息地です。
- 草原の大型哺乳類:広大な草原には、数万頭のモンゴルガゼルの群れが生息しており、オオカミなどの捕食者を含む健全な生態系が維持されています。