概要
ラ・ショー・ド・フォンとル・ロクルは、スイス西部のジュラ山脈に位置する双子の都市です。厳しい自然環境にありながら、18世紀から時計製造業の一大中心地として発展しました。特に19世紀に両都市を襲った大火の後、時計製造という単一産業の合理化と効率化を徹底的に追求した都市計画に基づいて再建された点が特徴です。この産業と一体化したユニークな都市景観が評価され、2009年に世界文化遺産に登録されました。
時計製造のための都市計画
両都市の都市計画には、時計職人のために最適化された以下のような特徴が見られます。
- 碁盤目状の街路:火災後の再建で、整然とした碁盤目状の街路が計画され、交通と物流の効率化が図られました。
- 工房と住居の一体化:建物は、南向きに大きな窓を設けて採光を確保し、上層階を住居、階下を時計工房として利用できるように設計されました。これにより、職人は自宅で精密な作業に集中できました。
- 開放的な空間:建物と建物の間隔が広く取られ、火災の延焼を防ぐとともに、工房に十分な自然光を取り入れる工夫がなされています。
この都市計画は、産業革命期において職人仕事と工場生産が共存した「マニュファクチュア(工場制手工業)」の都市モデルとして、他に類を見ないものです。
世界遺産登録基準
- (iv) 人類の歴史上において代表的な段階を示す、建築様式、建築技術の集合体、または景観の顕著な見本であること。