概要
オスピシオ・カバーニャスは、メキシコ第2の都市グアダラハラの歴史地区にある巨大な複合施設です。19世紀初頭、フアン・ルイス・デ・カバーニャス司教によって、孤児、高齢者、病人などを保護するための救貧院・病院として設立されました。新古典主義様式の傑出した建築であり、同時にメキシコ壁画運動の巨匠ホセ・クレメンテ・オロスコによる最高傑作の壁画群があることから、1997年に世界文化遺産に登録されました。
建築とオロスコの壁画
建築家マヌエル・トルサの設計によるこの建物は、均整のとれたシンメトリーな構造で、多くのパティオ(中庭)を配した機能的なデザインが特徴です。そのシンプルながらも調和のとれた空間は、収容される人々の生活に配慮した人道的な設計思想を反映しています。
中央礼拝堂には、メキシコ三大壁画家のひとり、ホセ・クレメンテ・オロスコが1930年代後半に描いた57面のフレスコ画があります。代表作『炎の人』をはじめ、メキシコの歴史や人間の苦悩、希望をダイナミックに描いたこれらの壁画群は、20世紀美術の傑作と高く評価されています。
世界遺産登録基準
- (i) オロスコによる壁画群は、人類の創造的才能を表現する傑作である。
- (ii) 礼拝堂の空間と壁画の統合は、芸術における文化交流の顕著な例である。
- (iii) この施設は、恵まれない人々を支援するという、当時としてはユニークな目的で建てられた慈善施設の優れた証拠である。
- (iv) 機能性と美しさを両立させたオスピシオ・カバーニャスの建築は、同種の施設の模範となった優れた典型である。