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琉球王国のグスク及び関連遺産群

琉球王国のグスク及び関連遺産群とは

琉球王国のグスク及び関連遺産群は、沖縄県に点在する9つの史跡からなる世界文化遺産で、2000年に登録されました。これらは、15世紀から19世紀にかけて沖縄本島を中心に栄えた琉球王国の歴史、文化、信仰を物語る貴重な遺産です。

「グスク」とは沖縄の言葉で「城」を意味し、単なる軍事施設ではなく、王や按司(あじ)と呼ばれる地域の支配者の居住地であり、祭祀が行われる聖なる場所でもありました。自然の地形を巧みに利用した美しい石垣の曲線は、琉球独自の築城技術を示しています。

9つの構成資産

世界遺産には、5つのグスク(城跡)と4つの関連資産が含まれています。それぞれが琉球王国の多面的な歴史と文化を象徴しています。

資産名称 読み方 概要
今帰仁城跡 なきじんじょうあと 沖縄本島北部を支配した北山王の居城。難攻不落といわれた堅牢な城壁が特徴。
座喜味城跡 ざきみじょうあと 名将・護佐丸によって築かれたグスク。精巧な石積み技術によるアーチ門が美しい。
勝連城跡 かつれんじょうあと 有力な按司であった阿麻和利の居城。丘の頂上に築かれ、美しい景観が望める。
中城城跡 なかぐすくじょうあと 琉球のグスクの中で最も原型を留めているとされる。新旧の城壁が共存している。
首里城跡 しゅりじょうあと 琉球王国の政治・外交・文化の中心地。日本の城とは異なる様式が特徴。
園比屋武御嶽石門 そのひゃんうたきいしもん 首里城の門の一つ。国王が城外へ出る際に道中の安全を祈願した礼拝所。
玉陵 たまうどぅん 第二尚氏王統の陵墓。琉球独自の石造建築様式を今に伝える。
識名園 しきなえん 琉球王家最大の別邸。中国からの使者(冊封使)をもてなす迎賓館としても使われた。
斎場御嶽 せーふぁうたき 琉球王国最高の聖地。琉球の創世神アマミキヨが造ったとされ、国家的な祭祀が行われた。

世界遺産としての価値と登録基準

この遺産群は、以下の3つの登録基準を満たしていると評価されました。

  • 登録基準(ii): 長年にわたるアジア広域の文化交流を背景に、琉球王国が育んだ独自の文化の証であること。
  • 登録基準(iii): すでに消滅した琉球王国の社会や文化を、今に伝える顕著な物証であること。
  • 登録基準(vi): グスクや御嶽は、琉球の人々の精神文化や信仰のあり方と深く結びついており、現代まで続く文化的伝統の証であること。

首里城の火災と世界遺産

2019年10月、構成資産の一つである首里城跡の中心的な建物であった正殿などが火災により焼失しました。しかし、世界遺産の登録対象は、焼失した建物だけでなく、城壁や建物の基礎などの遺構を含む「首里城跡」全体です。そのため、この火災によって世界遺産としての価値が失われたわけではありません。現在、沖縄の人々や国内外の支援のもと、2026年の完成を目指して正殿の復元作業が進められています。

観光と保全

琉球王国のグスク及び関連遺産群は、その歴史的背景と美しい景観から多くの観光客が訪れる人気のスポットです。一方で、貴重な文化遺産を未来へ継承するため、石垣の修復や環境整備など、継続的な保全活動が行われています。訪問者は定められたルールを守り、遺産を尊重することが求められます。

まとめ

琉球王国のグスク及び関連遺産群は、かつて東アジアの交易拠点として栄えた王国の栄華と独自の文化を伝える、かけがえのない宝です。これらの遺産を訪れることは、沖縄の歴史と自然が織りなす独特の文化に触れる貴重な機会となるでしょう。未来の世代へこの価値を引き継いでいくためにも、私たち一人ひとりがその重要性を理解し、保全に協力していくことが大切です。

琉球王国のグスク及び関連遺産群の基本情報

                         
国名 日本
世界遺産の名称 琉球王国のグスク及び関連遺産群
遺産の種類 文化遺産
登録年 2000
拡張・範囲変更
危機遺産
危機遺産登録期間
登録基準 (ⅱ)(ⅲ)(ⅵ)
備考
範囲(ヘクタール)54.9
地図

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