ゴルディオンとは
ゴルディオンは、トルコ共和国の首都アンカラの南西に位置する古代都市遺跡です。紀元前12世紀頃から鉄器時代にかけて、アナトリア半島で栄えたフリギア王国の首都として、また政治・文化の中心地として繁栄しました。「ゴルディオスの結び目」の伝説で知られ、紀元前333年にアレクサンダー大王がこの地を訪れ、一刀のもとに結び目を断ち切ったという逸話は特に有名です。
この遺跡は、都市の遺構が残る城砦丘(シタデル・マウンド)と、その周辺に広がる100基以上の古墳(トゥムルス)から構成されています。特にフリギア王国の最盛期を築いたミダス王のものとされる巨大な古墳は、当時の建築技術と王の権威を今に伝えています。これらの遺跡群は、鉄器時代のアナトリア文明を理解する上で他に類を見ない証拠であるとして、2023年に世界文化遺産に登録されました。
登録基準
(iii) 現存する、あるいは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
ゴルディオンは、古代フリギア文明の存在とその文化的達成を証明する最も重要な遺跡です。王都の構造、建築様式、埋葬儀礼、そして経済活動の痕跡は、アナトリアの鉄器時代文明を包括的に理解するための比類なき物証を提供します。
遺産の概要
ゴルディオン遺跡は、長年にわたる発掘調査により、フリギア王国だけでなく、ヒッタイト時代からローマ時代に至るまでの重層的な歴史が明らかになっています。
- 城砦丘(シタデル・マウンド): 王宮や神殿、工房、城壁などが発見された都市の中心部。層状に積み重なった遺跡から、都市の変遷を読み取ることができます。
- 古墳群(トゥムルス): フリギアの王族や貴族の墓とされる人工の丘。中でも「ミダス王の墓墳」は、未盗掘の状態で発見された木造の墓室を持ち、世界最古の木造建築物の一つとされています。
- 歴史的重要性: アレクサンダー大王の伝説だけでなく、ペルシア帝国のアケメネス朝の重要な拠点でもあり、東西文明の交流点としての役割も果たしました。
| 主要な遺跡 | 特徴 |
|---|---|
| 城砦丘(シタデル・マウンド) | フリギア王国の王宮やエリート層の居住区があった都市の中心。重層的な時代の遺構が残る。 |
| ミダス王の墓墳(大古墳) | 高さ50mを超える巨大な古墳。内部から保存状態の良い木槨墓と豪華な副葬品が発見された。 |