概要
ミラノのサンタ・マリア・デッレ・グラーツィエ教会とドメニコ会修道院は、イタリア・ミラノに位置するルネサンス期の宗教建築です。この遺産が世界的に知られているのは、修道院の食堂にレオナルド・ダ・ヴィンチの不朽の名作『最後の晩餐』が描かれているためです。教会建築の美しさと、西洋美術史上最も重要な絵画作品の一つが一体となった、貴重な文化遺産です。
レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』
『最後の晩餐』は、レオナルドがミラノ公ルドヴィーコ・スフォルツァの依頼で1495年から1498年にかけて制作した壁画です。イエス・キリストが12人の弟子たちの中に裏切り者がいることを告げた、最も劇的な瞬間を描いています。レオナルドは、一点透視図法を駆使した巧みな構図と、弟子たち一人ひとりの驚きや動揺をリアルに描き分けた心理描写により、この主題に革命をもたらしました。彼は従来のフレスコ技法ではなく、テンペラ画で描いたため、完成後まもなくから劣化が始まり、第二次世界大戦の空襲被害も受けるなど、その保存は長年にわたる挑戦でした。度重なる修復を経て、今日その姿を伝えています。
教会の建築
サンタ・マリア・デッレ・グラーツィエ教会は、15世紀半ばにゴシック様式で建設が始まりましたが、後にルドヴィーコ・スフォルツァの命により、ルネサンス建築の巨匠ドナト・ブラマンテが改築を手掛けました。特に、ブラマンテが設計した半円形の壮麗な後陣(アプス)とクーポラは、ルネサンス建築の調和と均整の美を体現しています。この教会自体も、ロンバルディア・ルネサンスを代表する重要な建築物です。
世界遺産登録と登録基準
レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』が持つ普遍的な芸術的価値と、それが収められたルネサンス建築の傑作であることが評価され、1980年に世界文化遺産に登録されました。登録基準は以下の通りです。
- (i) レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』は、人類の創造的才能を表現する傑作である。
- (ii) この作品は、西洋絵画の運命を決定づけるほどの大きな影響を与えた。