アスマラ:アフリカの近代主義都市とは
アスマラは、東アフリカに位置するエリトリアの首都です。20世紀前半のイタリア統治時代に建設された、アフリカにおける近代主義の都市計画と建築がほぼ完全な形で保存されていることで知られています。そのユニークな都市景観が評価され、2017年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。標高2,300mを超える高原に位置し、「雲の上の都市」とも呼ばれています。
遺産の価値と登録基準
アスマラの価値は、単一の建築物ではなく、都市全体が20世紀初頭の合理主義、未来派、アール・デコといった多様な近代建築の実験場として機能し、その全体像が今日まで保たれている点にあります。
- 登録基準(ii):20世紀初頭の都市計画理論がアフリカの文化的・地理的文脈の中でどのように適用されたかを示す、顕著な見本です。
- 登録基準(iv):植民地という特殊な環境下で発展した、近代主義建築の集合体として、建築史における重要な段階を例証しています。
近代主義建築の宝庫
アスマラの街には、映画館、政府庁舎、商業ビル、教会、モスクなど、様々な様式の近代建築が調和しながら共存しています。
| 建物名 | 建築様式 | 特徴 |
|---|---|---|
| フィアット・タリアーニ・ビル | 未来派 | 飛行機を模したデザインで、巨大な翼のようなキャノピーが特徴的な元ガソリンスタンド。 |
| インペロ劇場 | アール・デコ | 縦のラインを強調したファサードや円形の窓が美しい、アール・デコ様式の傑作とされる映画館。 |
| アスマラ大聖堂 | ロンバルド・ロマネスク様式 | 高さ52mのゴシック様式の鐘楼がランドマークとなっているカトリック教会。 |
| グランド・モスク | 合理主義・イスラム様式 | ミナレットとドームが特徴的な、合理主義と伝統的なイスラム建築が融合したモスク。 |
都市の保全
長年の紛争と孤立が、皮肉にも大規模な再開発を免れ、奇跡的に街並みが保存される結果となりました。現在、エリトリア政府と市民は、この貴重な建築遺産を保護し、未来に継承するための取り組みを進めています。
参考文献
「Asmara: A Modernist African City」.UNESCO. https://whc.unesco.org/ja/list/1550