ガラホナイ国立公園とは
ガラホナイ国立公園は、スペイン領カナリア諸島のラ・ゴメラ島にある国立公園で、1986年にユネスコの世界自然遺産に登録されました。公園の最大の特徴は、ヨーロッパでは氷河期にほとんど姿を消してしまった「ラウリシルバ」と呼ばれる亜熱帯性の照葉樹林(月桂樹林)が、全体の約70%を占めていることです。この森は、太古の地球の姿を今に伝える「生きた化石」とも言われています。
ラウリシルバ(月桂樹林)
ラウリシルバは、数千万年前の第三紀に地中海沿岸に広く分布していた森林です。その後の氷河期や気候変動によりヨーロッパ大陸では絶滅しましたが、大西洋に浮かぶカナリア諸島など一部の地域では、海洋の影響で気候が安定していたため奇跡的に生き残りました。ガラホナイ国立公園の森は、北東からの湿った貿易風が山の斜面にぶつかって生じる霧によって常に潤っており、苔むした木々やシダ植物が生い茂る幻想的な景観を作り出しています。
生物多様性
孤立した島の環境で生き残ったガラホナイの森は、独自の生態系を育んでいます。公園内には多くの固有種が存在し、確認されている維管束植物約500種のうち、100種以上がカナリア諸島の固有種、さらにそのうちの20種以上がラ・ゴメラ島の固有種です。鳥類や昆虫にも固有種が多く、生物進化の研究において非常に重要な場所となっています。
世界遺産としての評価
ガラホナイ国立公園は、以下の2つの基準を満たしたことで世界遺産に登録されました。
- 登録基準(vii):霧に包まれたラウリシルバの森が作り出す、神秘的で卓越した自然美を持つ景観が評価されました。
- 登録基準(ix):第三紀の照葉樹林の生態系がほぼ手つかずの状態で保存されており、生態系の進化の過程を示す顕著な見本である点が評価されました。