ファジル・ゲビ、ゴンダールの遺跡群とは
ファジル・ゲビは、エチオピア北部の都市ゴンダールにある、17世紀から18世紀にかけてエチオピア帝国の首都として栄えた時代の宮殿群です。皇帝ファシラダスによって建設が開始され、「アフリカのキャメロット」とも呼ばれるこの城塞都市は、1979年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。城壁に囲まれた敷地内には、歴代皇帝の宮殿や教会、図書館などが点在しています。
遺産の価値と登録基準
ファジル・ゲビの建築群は、エチオピアの伝統的な様式に、インドやアラビア、さらにはポルトガルのバロック様式の影響が融合した「ゴンダール様式」として知られています。この独創的なスタイルは、当時の文化交流を物語る貴重な証拠です。
- 登録基準(ii):インド、アラビア、イエズス会宣教師がもたらしたバロック様式など、多様な文化の影響を受けながらも、エチオピア独自の建築様式を発展させた点で、文化交流の顕著な証拠です。
- 登録基準(iii):17世紀から19世紀にかけてのエチオピア文明を代表する、現存しない文化的伝統の類まれな証拠です。
主な建造物
約900mの城壁に囲まれた敷地内には、ゴンダール朝の栄華を伝える壮麗な建造物が数多く残されています。
建造物 | 特徴 |
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ファシラダス帝の宮殿 | ゴンダール様式を代表する最も壮大な建造物。石造りの重厚な外観と、円形の角塔が特徴。 |
イヤス帝の宮殿 | かつては豪華な装飾が施され、最も壮麗だったとされる宮殿。地震と空爆で大きな被害を受けた。 |
デブレ・ベルハン・セラシエ教会 | 「光の三位一体教会」を意味する。天井を埋め尽くす80人の天使のフレスコ画で世界的に有名。 |
ファシラダス帝の浴場 | 現在は年に一度のティムカット(主の公現祭)の際に水が張られ、巡礼者たちが洗礼を受ける儀式で知られる。 |
保全状況
内戦や自然災害による損傷を受けましたが、現在も修復・保存活動が続けられており、ゴンダール朝の歴史と文化を後世に伝えるための努力がなされています。
参考文献
「ファジル・ゲビ、ゴンダール地域」.UNESCO. https://whc.unesco.org/ja/list/19