ボロブドゥール寺院遺跡群とは
インドネシアのジャワ島中部に位置する、世界最大級の仏教遺跡です。8世紀から9世紀にかけてシャイレンドラ朝によって建造され、1991年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。巨大な石造りの構造物全体で、仏教の宇宙観である「三界」を立体的に表現した、壮大な曼荼羅(まんだら)となっています。
世界遺産登録基準
この遺産は、以下の基準を満たしたと評価されました。
- 基準(i): 建築と彫刻が見事に調和した、人類の創造的才能を示す傑作である。
- 基準(ii): インドから伝わった仏教思想が、ジャワの土着の祖先崇拝と結びつき、独自の芸術様式として昇華されたことを示している。
- 基準(vi): 仏教における悟りへの階梯を建築的に表現した、他に類を見ない物的な証拠である。
建築と仏教宇宙観
ボロブドゥールは、基壇、5層の方形壇、3層の円形壇、そして中央の大ストゥーパ(仏塔)からなるピラミッド状の構造物です。これは仏教の「三界」を表しています。
- 欲界(カーマ・ダートゥ): 基壇部分。欲望に満ちた人間世界を表す。
- 色界(ルーパ・ダートゥ): 方形壇部分。欲望を断ち切ったが、まだ形あるものにとらわれる世界。壁面には仏伝図などのレリーフが続く。
- 無色界(アルーパ・ダートゥ): 円形壇部分。形への執着からも解放された、悟りの世界。格子状の小ストゥーパが並ぶ。
参拝者は、この寺院を巡ることで、悟りへの道を追体験することができます。
精緻なレリーフと仏像
方形壇の回廊の壁面は、総延長5kmにも及ぶ1,460面の精緻なレリーフ(浮き彫り)で覆われています。これらは釈迦の生涯や教えを物語るもので、当時のジャワの自然や人々の暮らしを知る貴重な資料でもあります。また、寺院全体で504体の仏像が安置されています。
観光と保全
世界中から多くの観光客や仏教徒が訪れる重要な聖地です。火山灰による酸性雨や、観光客による摩耗など、保存上の課題も多く、インドネシア政府とユネスコが協力して継続的な修復・保全活動を行っています。
寺院の主要な構成要素
| 構成要素 | 特徴 |
|---|---|
| 中央大ストゥーパ | 寺院の頂上に位置し、「無」や「空」を象徴する。内部は空洞。 |
| 小ストゥーパ | 円形壇に72基配置。内部には仏像が安置されている。 |
| レリーフ(浮き彫り) | 釈迦の生涯や仏教説話を描いた物語絵巻。 |
| 仏像 | 各層の壁龕(へきがん)や小ストゥーパ内に合計504体安置されている。 |