ナーランダ・マハーヴィハーラ(ナーランダ大学)の遺跡とは
インドのビハール州にある古代の仏教大学の遺跡で、2016年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。5世紀から13世紀にかけて、アジア全域から学僧が集まる仏教教学の最高学府として栄え、「西遊記」で知られる玄奘三蔵もここで学びました。仏教学だけでなく、天文学、医学、論理学など幅広い学問が教えられていました。
世界遺産登録基準
この遺産は、以下の基準を満たしたと評価されました。
- 基準(iv): 僧院(ヴィハーラ)と祠堂(ストゥーパ)が整然と配置された建築様式は、その後の仏教施設のモデルとなり、アジア各地の仏教建築に影響を与えた。
- 基準(vi): アジアにおける仏教の教学と思想の発展、そして知識の伝播において果たした中心的な役割を物語る、他に類を見ない証拠である。
歴史的価値
ナーランダ大学は、単なる宗教施設ではなく、古代世界における国際的な学術センターでした。インド各地はもちろん、チベット、中国、東南アジアなどから多くの留学生を受け入れ、知の交流拠点として機能しました。ここで発展した仏教思想や学問は、アジアの精神文化に計り知れない影響を与えました。
主な遺跡
広大な敷地には、レンガ造りの僧院跡、祠堂跡、巨大なストゥーパ(仏塔)などが計画的に配置されています。特に、シャーリプトラの舎利を祀るとされる大塔(第3祠堂)は、度重なる増築の跡が見られ、ナーランダの長い歴史を象徴しています。発掘調査により、多数の仏像や経典、銅版なども出土しています。
観光と保全
遺跡はインド考古調査局によって管理されており、歴史的価値を学ぶための重要な観光地となっています。遺跡の風化を防ぎ、その学術的な重要性を後世に伝えるための保存活動が続けられています。
遺跡の主な構成要素
| 遺跡 | 特徴 |
|---|---|
| 大塔(第3祠堂) | 遺跡の中心に位置する巨大なストゥーパ。周囲には奉献ストゥーパが並ぶ。 |
| 僧院跡(ヴィハーラ) | 中庭を囲んで学僧の個室が並ぶ形式の居住・学習施設跡が複数残る。 |
| 祠堂跡(チャイティヤ) | 仏像を祀り、礼拝や講義が行われた建物の跡。 |
| ナーランダ考古学博物館 | 遺跡からの出土品を収蔵・展示している。 |