世界遺産の登録基準は全部で10項目あります。そのうち1つでも満たしていると認められれば世界遺産として登録されます。
文化遺産・自然遺産共通の登録基準ですが、(ⅰ)~(ⅵ)が文化遺産、(ⅶ)~(ⅹ)が自然遺産の登録基準となっています。また、文化遺産と自然遺産両方の登録基準を満たす世界遺産を複合遺産と分類します。
この記事では、世界遺産の登録基準についてそれぞれどのような基準なのかを解説します。
世界遺産の登録基準は10項目
まずは、表形式で10項目を見てみましょう。
番号 | 基準の内容 |
---|---|
(ⅰ) | 人類の創造的資質を示す傑作。 |
(ⅱ) | 建築や技術、記念碑、都市計画、景観設計の発展において、ある期間または世界の文化圏内での重要な価値観の交流を示すもの。 |
(ⅲ) | 現存する、あるいは消滅した文化的伝統または文明の存在に関する独特な証拠を伝えるもの。 |
(ⅳ) | 人類の歴史上において代表的な段階を示す、建築技術または科学技術の総合体、もしくは景観の顕著な見本。 |
(ⅴ) | ある文化(または複数の文化)を代表する伝統的集落や土地・海上利用の顕著な見本。または、取り返しのつかない変化の影響に寄り危機にさらされている、人類と環境との交流を示す顕著な見本。 |
(ⅵ) | 顕著な普遍的価値をもつ出来事もしくは生きた伝統、または思想、信仰、芸術的・文学的所産と、直接または実質的関連のあるもの。(この基準は、他の基準とあわせて用いられることが望ましい。) |
(ⅶ) | ひときわ優れた自然美や美的重要性を持つ、類まれな自然現象や地域。 |
(ⅷ) | 生命の進化の記録や地形形成における重要な地質学的過程、または地形学的・自然地理学的特徴を含む、地球の歴史の主要段階を示す顕著な見本。 |
(ⅸ) | 陸上や淡水域、沿岸、海洋の生態系、また動植物群集の進化、発展において重要な、現在進行中の生態学的・生物学的過程を代表する顕著な見本。 |
(ⅹ) | 絶滅の恐れのある、学術上・保全上顕著な普遍的価値をもつ野生種の生息域を含む、生物多様性の保全のために最も重要かつ代表的な自然生息域。 |
これらの基準に該当するかどうかを世界遺産委員会で審議し、登録可否を判断します。
それぞれの登録基準について解説します。
登録基準(ⅰ)
人類の創造的資質や人間の才能を示すと認められる遺産に適用されます。
多くの文化遺産がこの基準を満たしています。
登録基準(ⅰ)を満たす世界遺産の例
登録基準(ⅱ)
文化の価値観の交流を示す遺産に適用されます。文化的な交易路、文明の境目にある遺産が多くなっています。
かつては西欧文明が広まっていく過程を示す遺産であるかが重視されていましたが、現在は異文化や同一文化圏内での文化相互交流を重視しています。
登録基準(ⅱ)を満たす世界遺産の例
登録基準(ⅲ)
文化的伝統や文明の存在に関する証拠を示す遺産に適用されます。現在も存続しているか、途絶えてしまっているかは関係なく評価されています。
登録基準(ⅲ)を満たす世界遺産の例
登録基準(ⅳ)
建築様式や建築技術、科学技術の発展段階を示す遺産に適用されます。
「代表的な発展段階を示すか」が非常に重要視されており、例えば「シドニー・オペラハウス」は傑作ではあるものの「代表的な段階」とは異なるためにこの基準は認められていないのです。
登録基準(ⅳ)を満たす世界遺産の例
登録基準(ⅴ)
独自の伝統的集落や人類と環境の交流を示す遺産に適用されます。
存続が危ぶまれている集落や景観も含まれているほか、農業景観や文化的景観が特徴の遺産もこの基準を満たしています。
登録基準(ⅴ)を満たす世界遺産の例
登録基準(ⅵ)
人類の歴史上の出来事や伝統、宗教、芸術などと強く結びつく遺産に適用されます。
この基準は単独ではなく、他の基準とあわせて用いられることが望ましいとされています。これは、1996年の原爆ドームの審議以降に書き加えられることとなりました。
登録基準(ⅵ)を満たす世界遺産の例
登録基準(ⅶ)
自然美や景観美、独特な自然現象を示す遺産に適用されます。
世界的に有名な自然遺産の多くがこの登録基準を満たしており、日本でも屋久島が認められています。
登録基準(ⅶ)を満たす世界遺産の例
登録基準(ⅷ)
地球の歴史の主要段階を示す遺産で、地層や地形だけでなく恐竜や古代生物の化石遺跡もこの登録基準が適用されます。
登録基準(ⅷ)を満たす世界遺産の例
登録基準(ⅸ)
動植物の進化や発展の過程、独自の生態系を示す遺産に適用されます。
日本の自然遺産はすべてこの基準が認められているのも特徴です。
登録基準(ⅸ)を満たす世界遺産の例
登録基準(ⅹ)
絶滅危惧種の生息域でもあり、生物多様性を示す世界遺産に適用されています。
危機遺産リストに登録されている自然遺産の多くはこの登録基準を認められており、日本では知床がこの登録基準を満たしています。