カリフ都市メディナ・アサーラとは
メディナ・アサーラは、スペイン南部アンダルシア州のコルドバ郊外に位置する、10世紀に栄えたイスラム王朝(後ウマイヤ朝)の宮殿都市の遺跡です。2018年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。「輝く都市」を意味するこの都市は、当時の西欧イスラム文明の頂点を示すものであり、わずか70年ほどで破壊・放棄されたため、建設当初の姿が良好に保存されています。
遺産の価値
メディナ・アサーラは、後ウマイヤ朝のカリフの絶大な権力を示すとともに、当時のイスラム芸術と建築技術の粋を集めた傑作として高く評価されています。
西欧イスラム文明の中心地
10世紀、カリフを宣言したアブド・アッラフマーン3世によって建設が開始されました。宮殿、モスク、行政機関、住居、庭園などを備えた壮大な都市は、政治・文化の中心地として機能し、その繁栄は遠くビザンツ帝国にまで知られていました。
スペイン・イスラム建築の傑作
丘の斜面を利用した三層構造の都市計画や、馬蹄形アーチ、精緻な植物文様の彫刻、モザイクなど、イスラム建築の粋を集めた装飾が特徴です。特に、大使などを迎えたとされる「リコのサロン」は、その壮麗さで知られています。これらの建築様式は、後のアンダルシアの芸術に大きな影響を与えました。
世界遺産としての評価
メディナ・アサーラは、以下の登録基準を満たしたことが評価されました。
- (iii) 10世紀に消滅した西欧イスラム文明の文化と発展を、他に例を見ない形で完全に今に伝えている。
 - (iv) 都市計画から細部の装飾に至るまで、後ウマイヤ朝の建築と芸術の集大成を示す顕著な例である。