紅河ハニ棚田群の文化的景観
紅河ハニ棚田群の文化的景観は、中国雲南省南部の紅河南岸に広がる壮大な棚田地帯で、2013年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。アイラオ山の急峻な斜面に、ハニ族の人々が1300年以上にわたって刻み込んできたこの棚田は、自然環境と調和した人間の営みが創り出した傑作と評価されています。
自然と共生するハニ族の知恵
この文化的景観の価値は、その見た目の美しさだけでなく、ハニ族が築き上げてきた持続可能な生態系にあります。彼らは山の頂上部の森林を水源涵養林として保護し、中腹に集落を築き、その下に広がる棚田を潤しています。棚田で使われた水は、やがて谷の河川へと注がれます。この「森林・集落・棚田・河川」が一体となったシステムは、水の循環を巧みに利用し、山の生態系を維持しながら農業生産を可能にする、卓越した伝統的土地利用のモデルです。水牛を使った耕作や、アヒルや魚を田に放つ農法など、自然と共生する知恵が今も受け継がれています。
登録基準
この遺産は以下の基準を満たしたと評価され、世界遺産に登録されました。
- (iii) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
- (v) ある文化(または複数の文化)を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。
主な棚田地域
| 地域名 | 特徴 |
|---|---|
| 元陽(げんよう) | 最も規模が大きく、知名度が高いエリア。特に日の出や日没時の光景が美しい。 |
| 紅河(こうが) | 比較的傾斜が緩やかで、曲線美が特徴的な棚田が広がる。 |
| 金平(きんぺい) | ハニ族の伝統文化が色濃く残る地域。 |