概要
「ウラジーミルとスーズダリの歴史的建造物群」は、モスクワ北東に位置する古都ウラジーミルとスーズダリ、およびその周辺に残る中世ロシアの宗教建築群です。1992年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。12世紀から13世紀にかけて、キエフ大公国に代わるロシアの中心地として栄えたウラジーミル・スーズダリ公国の時代に建てられたもので、その美しい白亜の石造建築で知られています。
世界遺産登録基準
この遺産は、以下の基準を満たしたと評価されました。
- (i) 生神女就寝大聖堂をはじめとする建造物群は、その建築美と精巧な石の彫刻において、人類の創造的才能を示す傑作である点。
- (ii) ビザンティン様式を基盤としながら、地元の職人たちが独自の建築様式と石彫技術を発展させた、文化交流の顕著な例である点。
- (iv) ロシアにおける白亜の石造建築の頂点を示すものであり、その後のモスクワ建築の基礎となった重要な建築様式である点。
主な構成資産
この遺産は、ウラジーミルとスーズダリを中心に点在する8つの資産で構成されています。
| 遺跡名 | 特徴 |
|---|---|
| 生神女就寝大聖堂(ウラジーミル) | ウラジーミル・スーズダリ公国の中心的な大聖堂。内部にはアンドレイ・ルブリョフが描いたフレスコ画の一部が残る。 |
| ドミトリエフスキー聖堂(ウラジーミル) | 壁面全体が聖人や動植物の見事な浮き彫りで覆われていることで有名。 |
| スーズダリのクレムリンと生誕大聖堂 | スーズダリ最古の建築物。青地に金色の星が輝くドームが特徴的。 |
歴史と建築様式
12世紀、アンドレイ・ボゴリュブスキー公の時代に、ウラジーミルはキエフに代わるルーシ(古代ロシア)の中心地となりました。公は、首都にふさわしい壮麗な聖堂を次々と建設しました。地元の石灰岩を用いた白い壁面と、精緻な浮き彫りが特徴の「ウラジーミル・スーズダリ派」と呼ばれる建築様式は、ビザンティン文化の影響を受けながらも、ロシア独自の優美で力強いスタイルを確立しました。これらの建造物群は、モンゴル侵攻以前の、ルーシが最も輝いていた時代の貴重な証人です。