概要
「リヒタースフェルドの文化的及び植物学的景観」は、南アフリカ共和国北西部のナマクアランド地方に広がる、広大な山岳砂漠地帯です。2007年に文化遺産に登録されました。この地域は、多肉植物が非常に豊富な「多肉植物カルー生物多様性ホットスポット」に含まれており、乾燥に適応した独特の植物相と、半遊牧生活を続ける先住民ナマ族の文化的伝統が融合した景観が評価されています。
文化的価値:ナマ族の伝統
この土地では、ナマ族の人々が2000年近くにわたり、牧畜を中心とした半遊牧の生活様式(トランスヒューマンス)を維持してきました。彼らは季節ごとに家畜を連れて伝統的な放牧地を移動し、自然と共生しています。この生活様式は、植物資源を持続可能な形で利用する知恵の表れでもあります。また、彼らが住む移動式の住居「ハル・オム」(|haru oms)は、容易に解体・移設が可能な伝統的な建築様式です。
植物学的価値:多肉植物の宝庫
リヒタースフェルドは、乾燥した過酷な環境にもかかわらず、驚くべき植物多様性を誇ります。特に多肉植物の種類は世界で最も豊かとされています。主な植物には以下のようなものがあります。
- ハーフメンス(Pachypodium namaquanum):「半人間」を意味する奇妙な形の多肉植物で、人のような姿で北を向いて立つと言われています。
- クイーバーツリー(Aloe dichotoma):サン人が矢筒(クイーバー)として利用したことからこの名がついた巨大なアロエ。
- 多種多様な多肉植物:地面を這うものから低木まで、様々な形の多肉植物が自生しています。
登録基準
この遺産は、以下の基準を満たしたとされています。
- (iv) 2000年近くにわたってナマ族が実践してきた土地利用の文化的伝統が、景観の中に示されている。
- (v) ナマ族の半遊牧生活は、脆弱な乾燥生態系における持続可能な土地利用の顕著な見本である。