概要
アンジャルは、レバノン内陸部のベッカー高原に位置するイスラム初期の都市遺跡で、1984年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。8世紀初頭、ウマイヤ朝のカリフ、アル=ワリード1世によって建設された計画都市であり、その整然とした都市設計と建築様式は、当時のイスラム文化を今に伝える貴重な遺産です。
登録基準
この遺産は、以下の基準を満たしたと評価されています。
- (iii) イスラム文明の初期における社会経済活動を伝える、ウマイヤ朝時代のユニークな証拠である。
 - (iv) ローマ時代の計画都市の様式を取り入れた宮殿やモスク、浴場などが配置されており、ウマイヤ朝時代の都市計画と建築の顕著な例である。
 
ウマイヤ朝の都市計画
アンジャルは、ウマイヤ朝が短期間で築いた商業と保養のための都市でした。その設計はローマの軍営都市に似ており、南北を貫くカルド・マクシムスと東西を貫くデクマヌス・マクシムスという2本の大通りが都市を4つの地区に分割しています。この幾何学的な都市計画は、イスラム初期における都市設計の優れた例とされています。遺跡には、宮殿、モスク、ハマム(公衆浴場)、商店街の跡が良好な状態で保存されており、当時の都市生活を垣間見ることができます。
主な遺跡
| 遺跡名 | 特徴 | 
|---|---|
| 大宮殿 | 都市の南東部に位置する壮大な宮殿跡。ビザンティン様式の影響を受けた装飾が見られる。 | 
| モスク | 大宮殿の隣に位置するモスクの遺跡。 | 
| 列柱道路 | 都市を貫く2本の大通り。かつては600本以上の柱が並び、商店が軒を連ねていた。 | 
| テトラピロン | 2本の大通りが交差する中心点に建てられた四面門。 |