西天山とは
西天山は、カザフスタン、ウズベキスタン、キルギスの3か国にまたがる天山山脈の西部地域を指す、国境を越えた世界自然遺産です。2016年に登録されたこの地域は、標高700mから4,500m以上に及ぶ広大なエリアに、多様な生態系と景観が広がっています。特に、現在世界中で栽培されているリンゴの原種を含む、多種多様な果樹の野生種が自生する遺伝子の宝庫として、世界的に極めて重要な価値を持っています。
世界遺産登録基準
- (x) 非常に豊かな生物多様性を有し、特に栽培植物の野生種の宝庫として世界的に重要です。ユキヒョウなどの絶滅危惧種を含む多くの動植物にとって不可欠な生息地を提供しています。
遺産の価値
生物多様性の宝庫
西天山の最大の価値は、その卓越した生物多様性にあります。氷河期を乗り越えた多種多様な植物相が特徴で、特にリンゴ、アンズ、クルミ、ピスタチオといった多くの果樹の原生地として知られています。これらの野生種は、将来の食糧安全保障や品種改良において重要な遺伝資源となります。
雄大な自然景観
険しい峰々、深い渓谷、高山湖、広大な森林や草原など、西天山は変化に富んだ壮大な自然景観を誇ります。雪を頂いた高峰から、春には色とりどりの花が咲き乱れる草原まで、四季折々に美しい姿を見せ、訪れる人々を魅了します。
遺産の概要
地理と気候
中央アジアに位置する西天山は、典型的な大陸性気候ですが、標高差が大きいため、地域によって気候は大きく異なります。この多様な環境が、豊かな生態系を育む要因となっています。
主な動植物
絶滅危惧種のユキヒョウや、大型のアルガリ(野生羊の一種)をはじめ、数多くの哺乳類や鳥類が生息しています。植物では、リンゴの原種であるマルス・シーベルシーの広大な森や、チューリップの野生種などが代表的です。
代表的な動物 | 代表的な植物 |
---|---|
ユキヒョウ | リンゴの原種(マルス・シーベルシー) |
アルガリ | 野生のチューリップ類 |
メンジビアマーモット | 野生のアンズ、クルミ |
観光と保全
手付かずの自然を求めて、トレッキングやエコツーリズムが人気を集めています。一方で、放牧、密猟、インフラ開発などが自然環境への脅威となっており、3か国が連携して国境を越えた保全活動に取り組むことが重要です。持続可能な観光の推進が、この貴重な自然を守る鍵となります。