リドー運河とは
リドー運河は、カナダの首都オタワからキングストンまでを結ぶ、全長202kmの歴史的な運河です。19世紀初頭、米英戦争を教訓に、アメリカとの国境であるセントローレンス川を迂回する軍事目的の輸送路として建設されました。現在も運用されている運河としては北米最古のものです。
世界遺産登録の経緯
川や湖など既存の水系をダムで堰き止め、水位を上げて水路としてつなぐ「スラックウォーター方式」という、当時としては画期的な工法で建設されました。この卓越した技術と、建設当時の姿を非常によく留めている点が評価され、2007年に登録基準(i)と(iv)を満たして世界文化遺産に登録されました。
遺産の価値
リドー運河は、19世紀の土木技術の傑作です。
- 人類の創造的才能の傑作(登録基準i):自然の地形を巧みに利用したスラックウォーター方式の設計は、当時の技術の粋を集めたものであり、創造性の高い土木事業の好例です。
- 技術史上の顕著な見本(登録基準iv):ヨーロッパの運河建設技術を北米の環境に適応させた、大規模かつ保存状態の良好な運河であり、技術史における重要な段階を示しています。
主な構造物と現在の姿
運河は、47の閘門(こうもん)と52のダムなどで構成されています。特に首都オタワ中心部にある8連のオタワ閘門群は、高低差を克服する壮大な光景で知られています。冬には、オタワ市内の約7.8kmの区間が凍結し、世界最長の天然スケートリンク「リドー運河スケートウェイ」として市民や観光客に親しまれています。
| 構造物 | 説明 |
|---|---|
| オタワ閘門群 | オタワ川と運河を結ぶ、8段連続の閘門。国会議事堂の麓にある。 |
| キングストン閘門群 | オンタリオ湖との合流点にある閘門群。運河の南の玄関口。 |
| ジョーンズ・フォールズ・ダム | 建設当時、北米で最も高い石造りのアーチダム。 |
リドー運河は、歴史的遺産であると同時に、カナダの首都の景観と市民生活に深く根付いた文化遺産です。