天壇とは
天壇(てんだん)は、中国の北京市に位置する明・清代の皇帝が祭天の儀式を行った宗教的な建築群です。1420年、明の永楽帝によって建設され、天上の皇帝が住む天帝の宮殿を模したとされています。1998年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。
世界遺産としての価値
天壇は、その緻密な設計思想と壮麗な建築美により、「人類の創造的才能を表現する傑作」として評価されています(登録基準i)。全体の配置は天円地方(天は円く、地は四角い)という古代中国の宇宙観を反映しており、建築と自然景観が完璧に調和しています。特に、中国の木造建築技術の粋を集めた祈年殿は、その象徴的な存在です。
また、天壇で行われた祭天の儀式は、数世紀にわたって東アジアの多くの国に影響を与えた文化的伝統の顕著な見本であり(登録基準ii, iii)、その歴史的・文化的価値は非常に高いものとされています。
主な建築物
広大な敷地内には、祭天のための主要な建物が一直線上に配置されています。
- 祈年殿(きねんでん):豊作を祈る儀式が行われた場所。瑠璃瓦で葺かれた三層の円形の屋根が特徴的な、天壇を象徴する木造建築です。
- 皇穹宇(こうきゅうう):祭祀で用いる神の位牌を安置した建物。ここを囲む「回音壁」は、壁に向かって話すと音が反響することで知られます。
- 圜丘壇(えんきゅうだん):冬至に天を祀る儀式が執り行われた三層の円形祭壇。全ての部分が陽数(奇数)である9とその倍数で構成されています。