古代都市パルミラの概要
パルミラは、シリア中央部の砂漠地帯に位置する古代のオアシス都市です。紀元前1世紀から紀元後3世紀にかけて、シルクロード交易の中継地として繁栄し、「砂漠の女王」ゼノビアが統治した時代に最盛期を迎えました。ギリシャ・ローマ様式とペルシャ、メソポタミアの様式が融合した壮大な建築群が特徴で、「砂漠の真珠」と称えられました。その独自の文化と建築が評価され、1980年に世界文化遺産に登録されました。
主な遺跡
パルミラの遺跡は、広大な敷地に列柱道路を中心に展開しています。
- ベル神殿: 都市の主神であったベルを祀った最大級の神殿。オリエントと西洋の建築様式が融合しています。
- 列柱道路: 都市を貫く約1.2kmの大通り。かつてはコリント式の柱が750本以上並んでいました。
- 凱旋門: ローマ皇帝セプティミウス・セウェルスの来訪を記念して建てられたとされる三連の門。
- 円形劇場: 2世紀に建てられた半円形のローマ劇場。保存状態が良く、現在も利用可能です。
- 墓の谷: 裕福な一族が建てた塔墓や地下墓が並ぶ墓地エリア。
世界遺産登録基準
パルミラは以下の基準を満たしたと評価されました。
- (i) 人類の傑作: 壮大な列柱道路やベル神殿など、東西文明が融合した独自の芸術と建築の傑作です。
- (ii) 文化交流: ギリシャ・ローマ、ペルシャ、そして土着の文化が交流し、融合したことを示す顕著な証拠です。
- (iv) 建築様式: 古代の偉大な都市の遺跡として、その建築群は歴史上重要な時代を例証しています。
保全状況
2011年からのシリア内戦において、パルミラは過激派組織ISILによって二度にわたり占領され、ベル神殿、バアルシャミン神殿、凱旋門、塔墓の一部などが意図的に破壊されました。2013年には危機遺産リストに登録され、国際的な支援のもとで調査と修復計画が進められています。
| 遺跡 | 特徴 |
|---|---|
| ベル神殿 | パルミラ最大の神殿。オリエントと西洋の様式が融合(一部破壊)。 |
| 列柱道路 | 都市のメインストリート。壮大な景観を形成。 |
| 凱旋門 | 都市の象徴的な建造物の一つ(破壊後、再建計画あり)。 |
| 円形劇場 | 保存状態の良いローマ劇場。 |