サリアルカ:北部カザフスタンの草原と湖群とは
サリアルカは、カザフスタン北部に広がる広大な草原(ステップ)と湖沼群からなる地域で、2008年にユネスコの世界自然遺産に登録されました。この遺産は、中央アジアのステップ生態系と、渡り鳥にとって国際的に重要な湿地の両方を含んでいる点が特徴です。手つかずの自然が広がり、多くの希少種を含む多様な動植物の生息地となっています。構成資産は、ナウルズム国立自然保護区とコルガルジュン国立自然保護区の2つの保護区です。
登録基準
この遺産は、以下の基準を満たしたと見なされ、世界遺産に登録されました。
- (ix) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において、進行中の重要な生態学的・生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。
- (x) 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。これには、科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれる。
遺産の価値と特徴
生態系の多様性
サリアルカの価値は、広大な温帯草原と、そこに点在する淡水湖および塩湖が織りなす独特の生態系にあります。これらの湖は、シベリアと南アジアやアフリカを結ぶ渡り鳥の飛行ルート上で極めて重要な中継地となっており、毎年数百万羽の鳥が休息、採餌、繁殖のために飛来します。特に、世界的な絶滅危惧種であるシベリアヅルやハクガン、オオフラミンゴなどの重要な生息地です。
希少種の生息地
鳥類だけでなく、草原地帯には絶滅が危惧される哺乳類サイガも生息しています。手つかずの自然が残されているため、オオカミやマーモットなど、ステップ地帯を代表する多様な野生動物の貴重なサンクチュアリとなっています。
地理と気候
カザフスタン北部の広大な平原に位置し、気候は夏と冬の寒暖差が激しい大陸性気候です。冬は厳しく氷点下40度以下になることもありますが、夏には草原が花で彩られ、湖には多くの鳥が集まります。
動物 | 植物 |
---|---|
サイガ | ステップ植物(フェスク、ハネガヤなど) |
オオカミ | 湿地植物(アシ、ガマなど) |
渡り鳥(オオハクチョウ、フラミンゴなど) | 草原植物 |
参考文献
「サリアルカ:カザフスタン北部のステップと湖沼群」(UNESCOでは「サルヤルカ」と表記). UNESCO World Heritage Centre. https://whc.unesco.org/ja/list/1102