リートフェルト設計のシュレーダー邸とは
シュレーダー邸は、オランダのユトレヒトにある、20世紀の芸術運動「デ・ステイル」の理念を三次元で完璧に表現した住宅建築の傑作です。建築家ヘリット・リートフェルトが、施主であるトゥルース・シュレーダー夫人との緊密な協力のもと設計し、1924年に完成しました。2000年に世界文化遺産に登録されました。水平・垂直の線と面、そして赤・青・黄の三原色と無彩色（白・黒・グレー）によって構成されたこの住宅は、伝統的な建築の常識を覆す革新的なデザインで、モダニズム建築の象徴的な作品として国際的に高く評価されています。
世界遺産の登録基準
- 登録基準(i): シュレーダー邸は、近代建築運動における数々の理念を刷新し、凝縮して表現した、人間の創造的天才の傑作である。
- 登録基準(ii): デ・ステイル派の思想を純粋な形で建築に適用し、その後の建築デザインの発展に決定的な影響を与えた。
建築の価値と特徴
シュレーダー邸の最大の価値は、建築における「空間」の概念を根本から変えた点にあります。内部と外部の境界を曖昧にする大きな窓やバルコニー、そして特に2階のリビングエリアでは、固定された壁の代わりにスライド式の可動間仕切りを採用しました。これにより、一つの大きなオープンスペースを、必要に応じて寝室や書斎といった小さな個室に自由に分割・再結合することができます。この流動的でダイナミックな空間構成は、住み手のライフスタイルに合わせた柔軟な暮らし方を可能にするという、当時としては非常に斬新な思想の表れでした。モンドリアンの絵画のように厳格な幾何学的構成と色彩計画を持ちながらも、人間的な温かみと機能性を両立させたこの住宅は、デ・ステイル運動の理想、ひいては近代建築の目指した方向性を体現する記念碑と言えます。
デザインの主な要点
- 流動的な空間: 可動間仕切りによって実現された、固定観念にとらわれない柔軟な間取り。
- 内外の連続性: コーナーウィンドウやバルコニーによって、内部空間と外部空間が一体化している。
- 色彩計画: 構造線を際立たせるための、三原色と無彩色の巧みな使用。
- 非対称の構成: 独立した線と面が、互いに滑るように組み合わされた立体的な構成。
