ラニ・キ・ヴァヴとは
インドのグジャラート州パタンにある壮麗な階段井戸で、2014年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。11世紀にソランキ朝のウダヤマティ王妃が亡き夫を偲んで建設したと伝えられています。「ラニ・キ・ヴァヴ」とは「王妃の階段井戸」を意味します。地下水を確保する実用的な施設でありながら、神殿のように精緻な彫刻で飾られた芸術作品でもあります。
世界遺産登録基準
この遺産は、以下の基準を満たしたと評価されました。
- 基準(i): 階段井戸という建築形態を、芸術の域にまで高めた人間の創造的才能の傑作であること。
- 基準(iv): インドにおける地下水利用の建築技術の発展段階を示す、極めて優れた例であること。
遺産の価値
ラニ・キ・ヴァヴの価値は、その卓越した建築技術と芸術性にあります。地下7層にも及ぶ構造で、壁面はヴィシュヌ神とその化身、女神たち、神話の場面などを描いた無数の彫刻で埋め尽くされています。これは、水が神聖なものであるというヒンドゥー教の思想を反映しており、単なる井戸ではなく、地底の神殿ともいえる空間です。
建築と彫刻の特徴
井戸は東西に長く伸びる階段と踊り場で構成され、最深部には円形の井戸本体があります。柱や梁、壁の隅々にまで施された彫刻は、マール・グルジャラ様式と呼ばれるこの地方独特の建築様式の頂点を示しています。特に、ヴィシュヌ神の10の化身(ダシャーヴァターラ)や、天女アプサラスの官能的な彫刻は圧巻です。
観光と保全
長年、洪水によって土砂に埋もれていたため、奇跡的に保存状態が良好です。現在は人気の観光地となっており、インド考古調査局によって厳重に管理・保護されています。訪問者は、この貴重な遺産の芸術性と歴史的重要性を学ぶことができます。
主な彫刻のモチーフ
| モチーフ | 特徴 | 
|---|---|
| ヴィシュヌ神の化身 | ヴァラーハ(猪)、ナラシンハ(人獅子)など、10の化身が精緻に彫られている。 | 
| 女神たち | ドゥルガー、パールヴァティーなど、ヒンドゥー教の主要な女神が描かれている。 | 
| 天女(アプサラス) | 化粧をする姿など、官能的で生き生きとした表情の女性像が多数見られる。 | 

 
    
       
       
       
       
       
       
       
       
      
