ピリン国立公園とは
ブルガリア南西部にそびえるピリン山脈の大部分を占めるのが「ピリン国立公園」です。最高峰ヴィフレン山(2,914m)をはじめとする鋭い山々、氷河によって削られたカール(圏谷)、そして点在する180以上の氷河湖が織りなす壮大な石灰岩の山岳景観が特徴です。その独特な地形と豊かな生物多様性が評価され、1983年に世界自然遺産に登録されました。
氷河が創りだした景観と豊かな生態系
ピリン山脈の景観は、最終氷期に形成されたもので、大理石や花崗岩が露出した険しい岩峰が連なります。この厳しい環境が、多様でユニークな生態系を育んできました。公園の価値は以下の点に集約されます。
- 地形: 鋭い稜線、深い谷、そして「ピリンの瞳」と称される美しい氷河湖群が広がる、典型的なアルプス型地形。
- 植生: 標高に応じて植生が垂直分布しており、特にバルカン半島固有種であるボスニアマツのヨーロッパ最大級の純林が見られます。
- 生物多様性: ヒグマやオオカミなどの大型哺乳類に加え、多くの固有種の植物や無脊椎動物が生息・生育する、生物多様性のホットスポットです。
世界遺産登録基準
- 登録基準(vii):氷河湖、滝、洞窟、険しい山頂が織りなす景観は、際立った自然美を有しています。
- 登録基準(viii):氷河期からの地球の歴史と、現在進行中の地形形成プロセスを示す顕著な見本です。
- 登録基準(ix):バルカン半島の生態系の進化を示す重要な地域であり、多くの固有種・希少種を育む生態学的価値を持っています。
ピリン国立公園は、その手つかずの自然が訪れる人々を魅了するだけでなく、ヨーロッパの自然史を解き明かす上で学術的にも非常に重要な場所です。