モンゴルのアルタイ山脈にある岩面画群とは
モンゴルのアルタイ山脈にある岩面画群は、モンゴル西部のバヤン・ウルギー県に位置する岩面画(ペトログリフ)の集積地で、2011年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。この遺産は、主に3つの地域(①ツァガン・サラとバガ・オイゴル、②上ツァガン・ゴル、③アラル・トルゴイ)に残る数万点の岩面画から構成されています。描かれた年代は約1万2000年前の後期更新世から、スキタイや突厥の時代にまで及び、北アジアにおける人類の文化の変遷を物語る貴重な記録となっています。
世界遺産登録基準
- (iii) 1万年以上にわたる中央アジアの遊牧文化の発展と生活様式を伝える、類まれな証拠であることが評価されました。特に、狩猟採集社会から牧畜社会への移行期、そして馬を利用する遊牧騎馬民族の出現までが詳細に描かれています。
遺産の概要と価値
アルタイ山脈の岩面画は、この地域の環境と文化の歴史を映し出す鏡のような存在です。
- 文化の変遷の記録:最も古い時代の絵には、マンモスやサイといった現在は絶滅した大型動物を大勢で狩る様子が描かれています。時代が下ると、ヘラジカやシカの狩猟が中心となり、さらに後には馬に乗って家畜を追う遊牧民の生活が描かれるようになります。
- 環境変動の証拠:描かれている動物相の変化は、氷期後の気候変動に伴う草原環境への移行を示唆しています。
- 芸術性と社会性:岩面画は写実的なものから様式化されたものまで多様で、当時の人々の世界観や信仰を垣間見ることができます。
主要な岩面画群 | 特徴 |
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ツァガン・サラとバガ・オイゴル | 最も規模が大きく、数多くの岩面画が集中している。大型動物の狩猟場面が豊富。 |
上ツァガン・ゴル | 馬に引かせた戦車(チャリオット)の絵が見られることで知られる。 |
アラル・トルゴイ | スキタイ時代や突厥時代の騎馬民族に関連する絵が多く残されている。 |