ハバナの旧市街と要塞群とは
ハバナの旧市街と要塞群は、キューバの首都ハバナにある、スペイン植民地時代の歴史的中心地区とその防御施設群です。1519年に設立されたハバナは、新大陸とヨーロッパを結ぶ航路の要衝として急速に発展しました。海賊や他国の攻撃から都市と富を守るため、ハバナ湾の入り口には堅固な要塞が次々と築かれました。旧市街(ハバナ・ビエハ)には、バロック様式や新古典主義様式の壮麗な建物が混在し、活気ある広場や石畳の路地が独特の雰囲気を醸し出しています。この新旧の文化が融合した都市景観と、当時の軍事建築の粋を集めた要塞群が評価され、1982年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。
登録基準
この遺産は、以下の2つの基準を満たしたと評価されています。
- (iv) あるひとつの時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積、または景観の顕著な見本。ハバナの要塞群は、16世紀から19世紀にかけてのスペイン植民地の軍事建築の発展を示す、最大かつ最も完全な見本の一つです。
- (v) あるひとつの時代を例証する伝統的な集落や土地利用の顕著な見本。旧市街の統一感のある歴史的な街並みは、スペイン、イギリス、フランス、さらにはアフリカの文化が融合して生まれた、カリブ海地域における植民都市の顕著な例です。
遺産の価値
ハバナの価値は、その歴史的建築群と都市景観にあります。
- 歴史的建築と都市計画: 旧市街には、カテドラル(大聖堂)や旧総督邸、貴族の邸宅など、約900もの歴史的建造物が密集しています。アルマス広場やカテドラル広場など、5つの主要な広場を中心に都市が形成されており、植民地時代の都市計画を色濃く残しています。
- 防衛施設の遺産: モロ城、プンタ要塞、フエルサ要塞、カバーニャ要塞など、ハバナ湾を取り囲むように配置された要塞群は、当時の最先端の軍事技術を駆使して建設され、カリブ海の覇権を巡る歴史を物語っています。
遺産の概要
地理と気候
キューバ北西部の沿岸に位置し、ハバナ湾という天然の良港を有しています。気候は温暖な熱帯気候です。
主要な建築物と遺跡
- 旧市街(ハバナ・ビエハ): カテドラル広場、アルマス広場、サン・フランシスコ広場、ビエハ広場など、それぞれ異なる魅力を持つ広場が中心となっています。
- 要塞群: ハバナ湾の防衛システムを構成する主要な要塞。特にモロ城の灯台や、カバーニャ要塞の日没時の大砲の儀式は有名です。
観光と保全
世界中から観光客が訪れるキューバ最大の観光地です。しかし、建物の老朽化や塩害による損傷が深刻な問題となっています。市の歴史家オフィス(OHCH)が中心となり、観光収益を財源として、歴史的建造物の修復と地域住民の生活環境改善を両立させる独自の保全活動を精力的に進めています。
| 建築物・遺跡名 | 特徴 |
|---|---|
| カテドラル広場 | バロック様式のカテドラルを中心に、コロニアル様式の建物が並ぶ調和のとれた広場。 |
| モロ城(ロス・トレス・レジェス・デル・モロ城) | ハバナ湾の入り口に建つ、16世紀末からの要塞。灯台がシンボル。 |
| カバーニャ要塞(サン・カルロス・デ・ラ・カバーニャ要塞) | 18世紀に建設された米州最大級のスペイン要塞。毎晩行われる大砲の空砲儀式が有名。 |
| 旧総督邸(市立博物館) | アルマス広場に面するバロック様式の壮麗な建物。現在はハバナの歴史を展示。 |
ハバナの旧市街と要塞群は、その歴史的建築物と防衛施設から、訪れる人々に深い感動を与えます。この貴重な遺産を未来にわたって保護し、継承していくための努力が続けられています。