コトル地方の歴史的建造物と自然とは
コトル地方は、モンテネグロ南西部の、アドリア海に深く切れ込んだコトル湾沿岸の地域です。1979年に「文化的・歴史的地域コトルの自然」としてユネスコの世界複合遺産に登録されました。この遺産は、中世にヴェネツィア共和国の影響下で発展した城壁都市コトルや周辺の町々の文化的景観と、フィヨルドを思わせる雄大で美しいコトル湾の自然景観が一体となっている点に価値があります。
世界遺産登録基準
- (i) 中世の都市計画と建築が見事に融合したコトルの街並みは、人類の創造的才能を示す傑作である。
 - (ii) アドリア海における芸術、商業、文化の交流を物語る重要な証拠である。
 - (iii) この地域の歴史を反映した、中世の生活様式を伝える独自の文化的伝統が残されている。
 - (iv) ヴェネツィア共和国時代に築かれた壮大な防衛施設群は、当時の軍事建築の顕著な例である。
 
遺産の価値
コトル地方の価値は、文化と自然の完璧な調和にあります。
- 文化的価値:中心となるコトルの旧市街は、高い城壁に囲まれ、迷路のような路地、広場、教会、宮殿が密集しています。ロマネスク、ゴシック、ルネサンス、バロックといった多様な建築様式が混在し、特に聖トリプン大聖堂は代表的な建築物です。ペラストやリサンといった周辺の町々も、豊かな歴史を物語っています。
 - 自然的価値:コトル湾は、川の浸食によってできた谷が海面上昇によって沈んで形成されたリアス式海岸で、その深く穏やかな入り江と、背後にそびえる険しい山々の対比は、地中海で最も美しい景観の一つと称されています。
 
1979年の登録直後に大地震に見舞われましたが、ユネスコの支援による国際的なキャンペーンを通じて修復され、危機遺産リストから脱した経緯もあります。