ニンバ山厳正自然保護区とは
ニンバ山厳正自然保護区は、西アフリカのギニア、コートジボワール、リベリアの3カ国にまたがるニンバ山脈を中心とした自然保護区です。1981年に世界自然遺産に登録されました(当初はギニアとコートジボワールのみ、1982年に危機遺産リスト入り)。標高1,752mのニンバ山を最高峰とするこの地域は、「天空の森」とも呼ばれる山頂部の草原から、山腹の原生林、麓のサバンナまで、多様な生態系が垂直的に分布しています。その地理的な孤立性から、非常に多くの固有種や希少種が生息する生物多様性のホットスポットとして知られています。
登録基準
ニンバ山厳正自然保護区は、以下の2つの基準を満たしたと評価されています。
- (ix) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において、進行中の重要な生態学的・生物学的プロセスを代表する顕著な見本である。多様な地形と微気候が、複雑で豊かな生態系の進化を促しています。
- (x) 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいる。これには、科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれる。特に、世界で唯一の胎生の(卵でなく子を産む)カエルであるニシ・アフリカ・カエル(ニンバカエル)の生息地として極めて重要です。
遺産の価値
この保護区の価値は、その比類なき生物多様性にあります。
- 生物多様性の宝庫: 200種以上の固有種を含む、多様な動植物が生息しています。特に両生類、爬虫類、蝶などの固有性が高いことで知られています。
- 学術的価値: 地理的に隔離された環境で独自の進化を遂げた生物が多く、生物進化や生態学の研究において非常に重要なフィールドとなっています。
遺産の概要
地理と気候
西アフリカの3カ国の国境地帯に位置します。熱帯気候に属し、年間を通じて降雨量が多く、豊かな植生を育んでいます。山脈が雲を捉えるため、霧が多いのも特徴です。
主要な動植物
保護区内には多種多様な生物が生息しています。
- 動物: ニシ・アフリカ・カエル(ニンバカエル)、コビトカバ、絶滅が危惧されるニシチンパンジーの固有亜種、数多くのコウモリや鳥類など。
- 植物: 標高によって異なり、山頂部にはラン科植物などの固有種が見られる草原が、中腹にはシダ植物が豊富な雲霧林が広がっています。
観光と保全
ニンバ山脈周辺では鉄鉱石の採掘が行われており、鉱山開発による環境破壊が深刻な脅威となっています。また、密猟や農地拡大も問題であり、1992年以来、危機遺産にリストされています。ユネスコや環境保護団体が、鉱山会社や地元政府と協力し、環境への影響を最小限に抑えつつ、地域の持続可能な発展を目指す取り組みを続けています。
| 分類 | 代表的な生物 |
|---|---|
| 動物 | ニシ・アフリカ・カエル(ニンバカエル)、ニシチンパンジー、コビトカバ、ダイアナモンキー |
| 植物 | ラン科植物、シダ植物、コケ類など多数の固有種 |