メッセルの化石採掘地区の概要
メッセルの化石採掘地区は、ドイツのヘッセン州にある化石発掘現場です。約4700万年前の始新世に形成されたオイルシェール(油母頁岩)の地層から、極めて保存状態の良い動植物の化石が多数発見されています。哺乳類の進化の初期段階を解明する上で非常に重要な情報を提供することから、1995年に世界自然遺産に登録されました。
世界遺産登録基準
- (viii) 生命の記録や地形の発達における重要な地質学的過程、地形学的・自然地理学的特徴の顕著な例であること。
遺産の価値
この遺産の価値は、発見される化石の質と量、そしてそこから得られる科学的知見の重要性にあります。
- 化石の多様性と保存状態
哺乳類、鳥類、爬虫類、魚類、昆虫、植物など、当時の生態系を構成していた多種多様な生物の化石が発見されています。特筆すべきは、骨格だけでなく、皮膚や羽毛、胃の内容物まで保存されている化石が見つかる点で、これは世界でも類を見ません。 - 進化の証拠
特に、初期の霊長類や馬、コウモリなどの化石は、哺乳類の爆発的な多様化が起こった始新世の進化の過程を明らかにする上で、決定的な証拠を提供しています。
主な化石の発見例
| 化石名 | 特徴 |
|---|---|
| ダーウィニウス・マシラエ(通称アイダ) | ほぼ完全な骨格が残る、初期の霊長類の化石。霊長類の進化系統を考える上で重要な発見とされた。 |
| 始祖馬(プロパレオテリウム) | 現代の馬の祖先にあたる小型の哺乳類。指が4本あるなど、原始的な特徴を持つ。 |
| メッセロルニス | 羽毛の痕跡まで鮮明に残る、絶滅した鳥類の化石。 |