マナス野生動物保護区とは
マナス野生動物保護区は、インド北東部アッサム州のヒマラヤ山脈の麓、ブータンとの国境に位置する自然保護区です。マナス川が形成した沖積平野に広がる草原と森林地帯が特徴で、非常に豊かな生物多様性を誇ります。トラやゾウの保護区でもあるこの場所は、多くの絶滅危惧種の生息地として、1985年にユネスコの世界自然遺産に登録されました。
世界遺産登録基準
(vii) 自然美: ヒマラヤの丘陵地帯から熱帯林、広大な草原へと続く景観は、他に類を見ない自然の美しさを示しています。
(ix) 生態系: 異なる地形と環境が混在し、多様な生態学的プロセスが進行している顕著な例です。
(x) 生物多様性: 多くの絶滅危惧種が生息しており、生物多様性の保全上、世界的に見ても極めて重要な地域です。
希少な野生動物の宝庫
マナスは特に、他の地域では見られない多くの希少な固有種の生息地として重要です。代表的な野生動物には以下のような種がいます。
- ピグミーホッグ: 世界最小の野生ブタで、絶滅の危機に瀕しています。
- ゴールデンラングール: 金色の美しい毛を持つサルで、生息域が限られています。
- ヒスピッドヘア(アラゲウサギ)
- アッサムセッルーフガメ
- その他、ベンガルトラ、アジアゾウ、インドサイ、野生スイギュウなど
危機遺産からの回復
マナスは1980年代後半から続いた地域の政治的混乱と密猟の激化により、生態系が深刻なダメージを受け、1992年に「危機にさらされている世界遺産(危機遺産)」リストに登録されました。しかし、その後の政府や地域社会による懸命な保全努力の結果、治安が回復し、野生動物の個体数も増加したため、2011年に危機遺産リストから解除されました。これは、紛争地域における自然遺産保全の成功例として国際的に高く評価されています。