ナスカとフマナ平原の地上絵とは
ナスカとフマナ平原の地上絵(Lines and Geoglyphs of Nasca and Pampas de Jumana)は、ペルー南部の乾燥したナスカ平原とその周辺に広がる巨大な地上絵群です。紀元前500年から紀元500年頃にかけて、主にナスカ文化の人々によって描かれたとされています。1994年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。
登録基準
- 基準(i): 人類の創造的才能を表す傑作。砂漠の大地に描かれた動植物や幾何学図形は、その規模、精密さ、そして芸術性において、古代の人々の卓越した創造力を示しています。
- 基準(iii): 現存する、または消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。これらの地上絵は、ナスカ文化の宗教観や宇宙観を反映した儀式に関連するものと考えられており、失われた文明を理解する上で他に類を見ない証拠です。
- 基準(iv): 人類の歴史上において代表的な段階を示す、建築様式、建築技術または科学技術の総合体、あるいは景観の顕著な見本。乾燥した気候と地質学的条件が奇跡的にこれらの脆弱な線と図形を2000年以上にわたって保存し、古代の土地利用と文化的景観の顕著な例となっています。
遺産の価値
この遺産の最大の価値は、その目的や製作方法に多くの謎が残されている点と、古代の人々の世界観を壮大なスケールで表現した芸術性にあります。
- 技術的な謎: 上空からでなければ全体像を把握できない巨大な絵を、古代の人々がどのようにしてこれほど正確に描いたのかは、今なお完全には解明されていません。
- 文化的な意味: 地上絵は、雨乞いの儀式や、天体の運行、あるいは巡礼の道筋を示すものなど、様々な説が提唱されていますが、その真の目的は謎に包まれています。
概要
地理と歴史
ペルー南部のイカ県にあるナスカ川とインヘニオ川に囲まれた砂漠地帯に広がっています。地表の暗赤色の酸化した石を数センチメートル取り除き、その下にある明るい色の砂礫層を露出させるという単純な方法で描かれています。
主要な地上絵
ハチドリ、クモ、サルといった動物の絵や、数百の直線、三角形、台形などの幾何学図形が、約450平方キロメートルの範囲にわたって描かれています。
| 地上絵の名称 | 特徴 |
|---|---|
| ハチドリ | 長さ約93m。精巧で美しいデザインが特徴で、ナスカの地上絵を代表する一つです。 |
| クモ | 長さ約46m。一本の線で精密に描かれており、脚の先に関節まで表現されています。 |
| サル | 長さ約55m。長い尻尾が渦を巻いているユニークなデザインです。 |
| 宇宙飛行士 | 丘の斜面に描かれた人型の図形。古代の宇宙人との関連を想像させます。 |
ナスカとフマナ平原の地上絵は、古代文明の謎と芸術性を今に伝える、世界でも類を見ない貴重な文化遺産です。
参考文献
UNESCO World Heritage Centre. “Lines and Geoglyphs of Nasca and Pampas de Jumana”. https://whc.unesco.org/en/list/700