フレーザー島(ガリ)とは
フレーザー島は、オーストラリアのクイーンズランド州沖に位置する世界最大の砂の島(砂島)で、1992年に世界自然遺産に登録されました。全長約123km、面積1,840平方キロメートルに及ぶこの島は、先住民バチェラ族の言葉で「楽園」を意味する「ガリ(K’gari)」の名でも知られています。島全体が数百万年かけて海から運ばれた砂で形成されており、砂丘、湖、そして砂の上に育つ熱帯雨林という特異な景観を特徴とします。
世界遺産としての価値
フレーザー島は、以下の3つの登録基準でその価値が認められています。
- 登録基準 (vii): 砂の上にそびえる熱帯雨林、100を超える淡水湖、色彩豊かな砂の崖など、壮大で変化に富んだ自然美を有します。
- 登録基準 (viii): 風と水によって砂が堆積し、砂丘が移動・変化していく地球の地質学的プロセスが現在も進行中であり、その様子を観察できる顕著な見本です。
- 登録基準 (ix): 砂という栄養の乏しい土壌の上で、植物が遷移し熱帯雨林へと発展していく独自の生態学的プロセスを示す類稀な事例です。
砂の島に広がる生態系
島の最も注目すべき点は、砂地に根を張り、高さ60mにも達するサティネーやユーカリなどの大木が生い茂る熱帯雨林です。これは、菌類が落ち葉を分解して栄養を供給するという、特殊なメカニズムによって支えられています。また、マッケンジー湖に代表される、澄んだ水が美しい「ハンギング・レイク(宙づりの湖)」も特徴的です。動物では、オーストラリアで最も純血に近いとされる野生の犬「ディンゴ」の生息地として重要です。
観光と保全
四輪駆動車でのドライブやキャンプ、湖での水遊びなど、自然を満喫する観光が人気です。しかし、増加する観光客が脆弱な生態系に与える影響が懸念されており、ディンゴとの適切な距離の確保や、植生を保護するためのルールが厳格に定められています。持続可能な観光の実現が、この島の未来にとって重要な課題となっています。
| 分類 | 代表的な種 |
|---|---|
| 動物 | ディンゴ、フクロシマリス、ハリモグラ、ザトウクジラ(沖合) |
| 植物 | サティネー、バンクシア、リボンガム(ユーカリの一種) |