厳島神社とは
1996年12月の世界遺産委員会で正式に世界文化遺産として登録された、広島県廿日市市にある神社です。
社殿を中心とする厳島神社、前面の海、背後の弥山原始林を含む431.2ヘクタールが登録範囲となっています。
登録基準の具体的内容
世界遺産の登録基準は、ⅰ、ⅱ、ⅳ、ⅵを満たしています。
登録基準ⅰ
厳島神社は12世紀に時の権力者である平清盛の造営によって現在の壮麗な社殿群の基本が出来上がりました。海上に立地し、背景の山容(弥山原始林)と一体となった景観は、平清盛の卓越した発想力の賜物であり、平安時代の代表的な資産の1つです。
登録基準ⅱ
平安時代の貴族の住宅建築様式である寝殿造りを神社建築に取り入れており、同一文化圏内の価値観の交流を体現しています。
また、周囲の環境と一環になった建造物群の景観は、その後の日本人の精神文化を体現する景観設計の発展にも大きな影響を与えています。
登録基準ⅳ
度重なる再建にも関わらず、創建時の様式に忠実に再建されており、平安時代、鎌倉時代の建築様式を今に伝える数少ない建造物群です。
登録基準ⅵ
日本古来の神道の施設であり、日本人独自の精神文化を顕著に表した建造物群及び景観設計となっています。
遺産概要
厳島神社が構成している遺産それぞれについて解説します。
厳島神社本社、摂社客神社
本社は水上の建造物群の中心になっています。本社本殿と海上の大鳥居を結ぶ軸線上に本社本殿・幣殿・拝殿・祓殿・高舞台・平舞台といった主要建造物が立ち並んでいるのが、統一感のある景観を作り出しています。
本殿は祭神として市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)、田心姫命(たごりひめのみこと)、湍津姫命(たぎつひめのみこと)を祀っています。
本社と東回廊で結ばれているのが摂社客神社です。本社が北側に向いているのに対し、客神社は西側を向いた正面にあります。客神社の各建造物群は1241年に再建されていますが、創建時の雰囲気を残しています。
これら海上の宗教建造物群は鮮やかな朱色に塗られており、背景の弥山、海上の青と独特の景観を作り出しています。
弥山原始林
弥山原始林は1929年に天然記念物に指定され、1957年には特別保護区となっています。古代より御神体として崇められてきた山であり、貴重な植生を残す自然林でもあります。
山内には「消えずの霊火」が残っており、これは空海が宮島で修行した際に焚かれた護摩の火が約1200年に渡って燃え続けていると言われており、信仰の山である弥山の歴史を伝えています。
能舞台、大鳥居、豊国神社本殿、五重塔、多宝塔
![厳島神社の五重塔](https://whlibrary.net/wp-content/uploads/2022/10/厳島神社_五重塔-1024x538.png)
能舞台は、本社の西側、西回廊で結ばれています。実は能舞台は江戸時代に建てられたもので、平安時代からあるわけではありません。1991年と2004年の台風で大きな被害を受けましたが、その後に修復されています。
大鳥居は1875年に完成した8代目のものが立っています。
豊国神社本殿は857畳の大広間を持っていることから千畳閣とも呼ばれています。
五重塔は1407年に建立された高さ約27mの塔で、全体の建築様式は和様ですが、木組みなどの一部には禅宗様が見られる折衷様式となっています。
多宝塔は1523年に建立され、外観に和様、内装の装飾などに大仏様、禅宗様の建築様式が確認できます。現在は桜の名所としても有名です。
寝殿造りと両流造り
寝殿造りは貴族の住宅建築の様式であり、神社建築様式には存在していませんでしたが、平清盛が厳島神社の造営にあたって取り入れました。
寝殿造りの特徴は、独立した各部屋を渡り廊下で繋ぐもので、厳島神社においても本社自体の建物配置に渡り廊下が効果的に使われています。
本社本殿と客神社本殿の建物は両流造りという形式で、入り口側の屋根だけでなく工法の屋根も延ばし向拝としている点が特徴です。