厳島神社とは
厳島神社は、広島県廿日市市の厳島(通称、宮島)に鎮座する神社です。1996年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。創建は593年と伝えられ、平安時代後期の1168年頃、平清盛によって現在の海上社殿の基礎が築かれました。海を敷地と捉え、潮の満ち引きによってその表情を大きく変える独創的な建築様式が特徴です。背後に広がる弥山の原生林を含む神社の境内と、前面の海が一体となった景観は、世界的にも類を見ない美しさを誇ります。
満潮時には、朱塗りの鮮やかな社殿群がまるで海に浮かんでいるかのような幻想的な風景となり、干潮時には大鳥居の根元まで歩いて行けるなど、時間によって異なる魅力を楽しむことができます。
世界遺産としての価値
登録基準
厳島神社が世界遺産に登録されたのは、以下の4つの基準を満たしていると評価されたためです。
- 基準(i) 人類の創造的才能を表現する傑作: 自然の景観と調和し、潮の満ち引きを利用した独創的な構成は、平安時代の寝殿造の様式を応用した傑出した建築物と評価されました。
- 基準(ii) 文化交流を証明するもの: 日本の神道建築が、大陸から伝わった仏教建築などの影響を受けながら、独自の発展を遂げた様子を示す重要な証拠とされています。
- 基準(iv) 歴史を物語る建築様式の顕著な見本: 平安時代の貴族の住宅様式である寝殿造を神社建築に取り入れた代表的な例であり、その後の日本の建築に大きな影響を与えました。
- 基準(vi) 普遍的な出来事や伝統と関連するもの: 厳島神社は、古くから自然崇拝の対象であった弥山を御神体とする信仰の中心であり、日本の宗教的思想を理解する上で重要な遺産です。
遺産の概要
主要な建造物
厳島神社の社殿群は、国宝や重要文化財に指定されている多くの建物で構成されています。
| 建造物 | 特徴 |
|---|---|
| 大鳥居 | 高さ約16.6mの木造鳥居。干満の差を利用して、自らの重みだけで海中に立っています。現在の鳥居は1875年に再建されたものです。 |
| 本社本殿 | 厳島神社の中心的な建物で、市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)など三柱の女神が祀られています。 |
| 平舞台 | 本社の前方に広がる舞台で、舞楽などの神事が行われます。その広さは日本三舞台の一つに数えられます。 |
| 回廊 | 本社と各社殿を結ぶ朱塗りの美しい廊下です。柱の間隔が広く設計され、景観を損なわないよう工夫されています。 |
観光と保全
厳島神社は、その美しい景観と歴史的価値から、世界中から多くの観光客が訪れます。この貴重な文化遺産を後世に伝えるため、国や県、市が連携し、計画的な保存修理事業が進められています。近年では大鳥居の大規模な保存修理工事も完了しました。遺産を保護するためには、持続可能な観光のあり方が重要であり、訪れる私たち一人ひとりの理解と協力が不可欠です。