イビサ島の生物多様性と文化とは
「イビサ島の生物多様性と文化」は、スペインのバレアレス諸島に位置するイビサ島が持つ、豊かな自然環境と長い歴史の中で育まれた文化が融合した複合遺産です。地中海の海洋生態系の重要性と、古代から続く多様な文化交流の痕跡が評価され、1999年にユネスコの世界遺産に登録されました。
文化遺産
イビサ島の文化遺産は、紀元前7世紀にフェニキア人が築いた入植地にその起源を持ちます。主な構成要素は以下の通りです。
- ダルト・ビラ:イビサ・タウンの丘の上にある城塞都市。ルネサンス期に築かれた堅固な城壁に囲まれ、迷路のような白い街並みが広がります。
- サ・カレタのフェニキア人入植地跡:島で最初のフェニキア人の集落跡で、当時の都市計画の様子がうかがえます。
- プッチ・ダス・ムリンスのフェニキア人・カルタゴ人の共同墓地:地中海地域で最大級の規模と保存状態を誇る古代のネクロポリスです。
自然遺産
イビサ島の自然遺産の核心は、島の南から隣のフォルメンテーラ島にかけて広がる地中海固有の海草「ポシドニア・オセアニカ」の藻原です。このポシドニアの群生地は、海水中の酸素を供給し、二酸化炭素を吸収するだけでなく、多くの海洋生物の産卵場所や生息地となるため、「地中海の肺」とも呼ばれ、海洋生態系の維持に不可欠な役割を果たしています。この豊かな生態系は、絶滅危惧種の地中海モンクアザラシなどの生息も支えています。
世界遺産としての評価
この複合遺産は、文化遺産基準(ii)(iii)(iv)と自然遺産基準(ix)(x)の合計5つの基準を満たして登録されています。古代から続く文化交流の歴史と、地中海における生物多様性の保全の重要性を同時に示している点が特徴です。