登封の歴史的建造物群「天地の中央」とは
登封の歴史的建造物群「天地の中央」は、中国河南省の嵩山(すうざん)周辺に点在する、古代から続く宗教・学術関連の建造物群です。古代中国では、この地が天と地の中心「天地之中」であると信じられ、歴代王朝が天文観測や祭祀のための重要な施設を置きました。仏教、道教、儒教の聖地も集まっており、2010年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。
世界遺産としての価値
この遺産群は、古代中国の「天地之中」という宇宙観を建築という形で具現化した、他に類を見ない文化的伝統の証拠です(登録基準iii)。周公測景台や登封観星台といった天文観測施設は、暦の制定など国家の根幹を支えた科学技術の発展を示しています。また、嵩山には少林寺(仏教)、中岳廟(道教)、嵩陽書院(儒教)といった異なる宗教・思想の重要施設が共存しており、中国における精神文化の交流と発展の歴史を物語っています(登録基準vi)。
主な構成資産
世界遺産には、8つの地区にまたがる11の歴史的建造物が含まれます。
- 少林寺:禅宗の発祥地として世界的に有名な仏教寺院。カンフー(少林拳)の総本山としても知られます。歴代高僧の墓である塔林も含まれます。
- 嵩岳寺塔(すうがくじとう):北魏時代(6世紀)に建てられた、現存する中国最古の煉瓦塔。インドの仏塔様式と中国の建築様式が融合した独特の十二角形の形状をしています。
- 中岳廟(ちゅうがくびょう):五つの聖なる山「五岳」の一つ、中岳嵩山を祀る道教寺院。古代の山岳信仰の中心地であり、広大な敷地に壮麗な社殿が並びます。
- 嵩陽書院(すうようしょいん):宋代に儒学の中心となった中国四大書院の一つ。儒教の教育と研究の拠点でした。