ゲベル・バルカルとナパタ地域の遺跡群

               
国名 スーダン共和国
世界遺産の名称 ゲベル・バルカルとナパタ地域の遺跡群
遺産の種類 文化遺産
登録年 2001
拡張・範囲変更
登録基準 (ⅰ), (ⅱ), (ⅲ), (ⅳ), (ⅵ)
備考

ゲベル・バルカルとナパタ地域の遺跡群とは

ゲベル・バルカルとナパタ地域の遺跡群は、スーダンの首都ハルトゥームから北約400kmに位置する、クシュ王国時代に築かれた古代都市の遺跡です。クシュ王国は、クシュ人がナパタに建てた、アフリカ最古の黒人による国家です。

ナパタ文化(紀元前900〜前270)とメロエ文化(前270〜後350)に分けられますが、メロエ文化は2011年に別の世界遺産『メロエ島の考古遺跡』として登録されました。

登録基準の具体的内容

ゲベル・バルカルとナパタ地域の遺跡群は、世界遺産の登録基準ⅰ、ⅱ、ⅲ、ⅳ、ⅵを満たしています。

登録基準ⅰ

ゲベル・バルカルとナパタン地域の遺跡のピラミッド、宮殿、神殿、埋葬室、葬儀用礼拝堂とそれらに関連するレリーフ、文字、壁に描かれた場面は、2000年以上にわたる人間集団の芸術、社会、政治、宗教的価値観を示す創造的天才の最高傑作です。

クルーの墓のコーベル・ヴォールトは、紀元前7世紀以降の地中海建築に影響を与えた新しい建築技法を構成しています。

登録基準ⅱ

ナパタン地域の遺跡は、その建築の観点から、かつてほとんど普遍的であった宗教と関連言語、すなわちエジプトの古い文字と国家神アモンへの崇拝の復活を証言しています。

登録基準ⅲ

ゲベル・バルカルと他の遺跡は、紀元前9世紀から6世紀のキリスト教化までナイル川流域で優勢だったナパト・メロイト(クシャイト)文明の例外的な証です。この文明は、北部のファラオ文化や他のアフリカ文化と強いつながりを持っていました。

登録基準ⅳ

建物の類型、その詳細、ゲベル・バルカル、ヌリ、クルルのピラミッドのアンサンブルのレイアウトは、その急角度と装飾された側面と一緒に、描かれた岩をカットした埋葬室は、長い期間(前9世紀〜後4世紀)に普及した葬儀建築と独特の芸術の優れた例を示しています。ズマの古墳は、紀元6世紀までこの埋葬の伝統の一部を受け継いでいます。

登録基準ⅵ

ゲベル・バルカルの丘は古代より宗教的伝統と地元の民間伝承と強く結びついています。このため、最大の神殿(例えばアモン神殿)は丘の麓に建てられ、現在でも地元の人々によって聖地とみなされています。

遺産の概要

古代、エジプト南部からスーダン北部にかけては、大国エジプトの影響を受けていました。紀元前1450年ごろには、古代エジプト第18王朝6代目ファラオのトトメス3世が、高さ約100mの砂山ジャバルに植民都市ナパタを建造し、古代エジプト王国の南限としています。

紀元前10世紀ごろになると、この地の出身者からなるクシュ王国が誕生します。

紀元前730年ごろには、ビアンキ王が逆にエジプト全域を統治し、ナパタは古代エジプト第25王朝の拠点となりました。それから約70年間にわたり、6代の王によってナパタを首都としたクシュ王国の支配が続いたと言われています。

クシュ王国がエジプトから退いた後もメロエは宗教の中心であり続けましたが、4世紀にエチオピアのアクスム王国によって滅ぼされました。

ナイル川流域の60km以上にわたって点在する遺跡群は、十数ヵ所にある石づくりの神殿に、土や日干しレンガづくりの宮殿、ピラミッドなどから構成されています。古代エジプトの主神アメン神を祀る最も大きな神殿は、46×160mもの総面積を誇ったと言われています。また、ピラミッドは最大のもので30mの高さに達し、内部に埋葬室が設けられていました。

遺跡のほとんどが紀元前10〜前3世紀のもので、1820年代にヨーロッパの探検家に発見され、1916年から本格的な発掘調査が始まりました。世界遺産に登録されたのは、遺跡のユニークさや、同地の宗教の伝統、民俗を知る上で重要な遺構と考えられたためです。

これらの遺跡は現在も同地において人々の聖地の役割を担っていますが、遺跡群の多くは砂岩で脆いつくりの上、砂嵐やナイル川の氾濫による浸食、来訪者や付近の車の往来などによる風化が進行しており、適切な保護が求められています。

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